不正絶えぬ政務活動費、ランキングで見る緩い実態 私的な旅行や飲食に使う例が後を絶たない背景

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中核市62市はどうだろうか。

(注)「領収書」項目の「原本提出など(15点)」は、「領収書を原本提出している(7点満点)」「支払先が個人の場合に個人名を公開(5点満点)」「領収書の閲覧に情報公開請求が不要(3点)」の合計。各項目のゼロ点は赤字で表示 (出所)全国市民オンブズマン連絡会議「政務活動費 情報公開度調査」。一部をフロントラインプレスで加工

公開度トップの函館市は、全議会を通じて唯一の100点満点だった。地元のオンブズマン組織が早くから税金の使い方に目を光らせ、数々の指摘を繰り返すなどしてきた結果、透明度が全国トップクラスになったのだという。政務活動費の不正で市議14人が立て続けに辞職した富山市は、公開度2位。その後に透明化を図ったことがプラスになったようだ。

下位に並んだ議会は、ここでもネット公開がほとんどされてない。そのために、評価点数が低くなっている。

47都道府県、20政令市、62中核市の計129議会をトータルで見ると、評点が50点以下という“失格”は52議会(40.3%)だった。

全国市民オンブズマン連絡会議が、政務活動費の状況を初めて調査し、公表したのは2002年である(当時は「政務調査費」)。そのとき、収支報告書に領収書、視察報告書を添付している地方議会は、都道府県・政令市ともゼロだった。その結果に衝撃を受けたオンブズマン側はこれ以降、政務活動費の透明性に関する調査を継続。都道府県議会では2003年調査で、初めて京都府が5万円以上の領収書を収支報告書に添付するようになった。

ところが、その後の歩みは遅く、47都道府県がすべて領収書を添付するようになったのは2015年を待たねばならなかった。

一方、領収書のネット公開は遅々とした歩みながら、少しずつ進んでいる。都道府県・政令市・中核市のうち、ネット公開を実現させたのは2016年時点では、わずか9議会だった。翌2017年からは30議会、49議会、62議会と増加。2020年には初めて5割を超えて73議会(57.5%)となった。今回詳報した2022年調査では、22都府県、13政令市、47中核市の合計82議会(63.6%)を数える。

情報公開度が高い議会ほど政務活動費の執行率は低い

全国市民オンブズマン連絡会議によると、ネット公開など情報公開度が高い議会ほど政務活動費の執行率は低くなるという関係がある。

例えば、中核市でランキング2位の富山市(97点)は、前述したように2016年には不正受給によって議員14人が辞職する異常事態を招いた。不正受給が続いていた2015年度の執行率は100%。調査対象の全議会のうち、唯一、全額を使い切っていた。

ところが、不正をきっかけに領収書のネット公開など透明化を図ったところ、執行率は35.9%(2021年度)まで下がった。

不祥事が起きた、または領収書がネット公開された翌年には、政務活動費の執行率が減少する実態は、政務活動費が本来の調査研究活動に支出されていないことを示している。前出の児嶋氏は次のように言及している。

「政務活動費はもともと、議会活動を活性化することを目的として法制化されたもの。そうである以上、政務活動費を用いた議会活動がどのような内容だったのかを市民にわかりやすく説明するのは、政務活動費を受領した側の義務。透明化に反対するなら、政務活動費の交付は不必要です。

政務活動費の支出を透明化することにより、市民は議員の興味・関心や活動の実態を生の資料で見ることができます。支出資料を通して議員が行った調査研究を知り、自分が投票した議員が期待通り働いているかを知ることができるのです。地方政治に市民が参加するために有益な情報。最近は不正問題がクローズアップされますが、政務活動費に対する関心を不正の追及にとどめていると、本質を見失うでしょう」

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