自衛隊の性加害生んだ「ホモソーシャル」の醜悪さ 報道を見て「自分には関係ない」と思う男性の盲点
そうした自他に害をなす「男らしさ」の規範意識をトキシック・マスキュリニティ(有毒な男らしさ)と呼ぶ。
2018年に起こった日本大学フェニックス反則タックル問題は、日本大学アメリカンフットボール部の監督やコーチが、自チームの選手に対し相手選手に怪我を負わせるためのタックルを強要した事件だ。
当該の試合直前の練習にて、反則タックルを行うことになる選手は監督・コーチから再三「闘志が足りない」「やる気を見せろ」と詰問を受け、その挽回の具体的な方法として反則タックルを指示された。
この事件の土台にも、ホモソーシャルの閉じた支配ー被支配の関係性の中で「タフであれ」という規範意識や暴力性を称揚するトキシック・マスキュリニティ的な文化が根底にあると考えられる。ホモソーシャルの歪みは、他者への加害のみならず、構成員自身の人生をも害するものだ。
包括的性教育が乏しかった結果、自助努力に任されてきた
「包括的性教育」という概念がある。日本における「性教育」のイメージから連想されるようなものとはまったく異なる概念だ。
ここまでに述べたような「ホモソーシャル」「ミソジニー」「トキシック・マスキュリニティ」といった、社会生活において重要なタームやその背景にあるジェンダー論の論理を学ぶことをベースとし、その一環として月経や生殖といった身体の話題がある。そうしたカリキュラムが「包括的性教育」だ。
そもそも日本の初等教育における性教育というと、6年間で1度、女子だけが集められて月経についての簡単な(生殖については触れない程度の)説明があったのみという体験の人が大半だろう。
このような包括的性教育を受けていない以上、ジェンダーに関わる基礎的な知識には個々人でばらつきがあり、自助努力に任されている状況だ。それゆえに分断や軋轢が生じ、時にニュースとして取り沙汰されるような凄惨な事件に繋がっていく。
学びを得ていく具体的な方法としては、とにかく専門家の正しい知見を頼ることが第一だ。そのうえで身近な者同士で情報交換をすること、少人数の勉強会のような機会を作ることなどが挙げられる。また組織レベルで言えば、専門家を招き、社員研修の一環としてジェンダーに関する講習を組み込むことなどが有効だろう。
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