自衛隊の性加害生んだ「ホモソーシャル」の醜悪さ 報道を見て「自分には関係ない」と思う男性の盲点

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実際、筆者もそうした企業向けの講習プログラムの提供に関わっているが、各業界のリーディングカンパニーでは浸透しつつあるものの、率先してそういった取り組みを実施する企業はまだまだ少ないのが現状だ。

包括的性教育が施されない現代では、適切な知識体系より先に、ネット上の有害な情報源に行き当たり、認識が歪められるケースが非常に多い。現代日本のネットコミュニティにおいては「弱者男性論」と呼ばれる概念が流布しているが、これは専門家の間ではまともな論理を伴った「言説」とは見なされていない。しかし、社会において孤立感や疎外感を抱く一部の男性たちは、自身を許し受け入れる概念と捉え没入していってしまう。

また、日本において非常に著名な専門家がトランスジェンダーなどの特定の属性の人に対して排他的・差別的だと指摘を受けていたり、フェミニズムを掲げた方針で知られる企業のリーダーがその実何の知識の裏付けもなく事業を展開していたりといった問題もあり、情報収集の妨げになる要素は多岐にわたり存在する。

いずれの場合も、情報源を見定めるにあたっては、学術的なバックボーンのある専門家であるか、あるいは問題を長年取り上げてきたジャーナリスト・文筆家など、実績のある人物であるかどうかを確認することが重要だ。

現代を生きるわれわれには、こうした一連のイシューに対する自覚が求められている。ピンとこない、納得がいかないとしても、まずは「どうやら世間ではそういうふうに言われているらしい」と一度受け止めることが重要だ。

意義深い前例ではあるが…

自衛隊で起こった事件について、こうした内部の醜聞に対し事実を認め謝罪することは極めて異例といえる。同様の被害に苦しめられてきた隊員、また今後苦しめられるかもしれなかった隊員たちにとって非常に意義深い前例となった。

ただ、本件はそもそも刑事事件相当の、つまり法の裁きに委ねられてしかるべき事案だと筆者は考える。

勤務先が事実であるか否かのジャッジをするのも、謝罪をするしないに腐心せざるをえないのも筋違いではないか。

こうした事後処理のあり方の背後にも、特権的な男性たちによるホモソーシャルの作為が感じられる。

ヒラギノ 游ゴ ライター/編集者

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ひらぎの・ゆうご / Yugo Hiragino

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