なぜ秘書官に長男起用?「岸田首相」2年目の危機 大型経済対策などで反転攻勢を狙うが不透明

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そして、翌4日は岸田政権が2年目に入った節目の日。本来は岸田首相が官邸入りの際、記者団に過去1年間の政権運営の手ごたえと、2年目を迎えての決意をアピールするはずだったが、午前7時22分ごろの北朝鮮ミサイル発射で吹き飛んだ。

日韓両政府によると、北朝鮮内陸部から発射された弾道ミサイルは、日本の東北地方上空を通過して同44分ごろ、太平洋上の日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下。これを受け政府は、飛距離は過去最長の約4600キロで最高高度が約1000キロと推定した。

このため、早朝から放映されていたNHKや民放テレビ各局のニュースや情報番組はすべて「北朝鮮ミサイル特別番組」と化し、3日の所信表明演説や4日の政権2年目の関連報道は棚上げとなった。

与党内からは「国葬を決めて以降の首相の運の悪さを象徴する。反転攻勢の姿勢もほとんど報道されず、泣きっ面に蜂だ」(閣僚経験者)との声が相次いだ。一方で「メディアの首相批判が表面化しなかったのだから不幸中の幸い」との皮肉な見方もあった。

内閣支持率は低いが、自民党の支持率は高水準

臨時国会に先立ち、大手メディア数社は、国葬実施後に緊急世論調査を実施した。その結果、すべての調査で内閣支持率の下落が続き、しかも、不支持率の増加で「支持・不支持が逆転」した。どの調査結果をみても「旧統一教会問題や故安倍氏の国葬実施、さらには物価高騰が支持率下落の要因」(調査専門家)であることは明らかだ。

ただ、支持率は微減で下げ止まりの兆しがあり、各種調査の平均値は40%前後と政権危機に直結する数字にまで落ちこんではいない。さらに、政党支持率をみると自民党は依然高水準を維持し、逆に野党陣営の軸となる立憲民主、維新の両党は現状維持か微減と勢いに欠ける。

しかも、今後の国会での与野党論戦のテーマについては「経済再生」「社会保障」が多数を占め、「旧統一教会」など政治スキャンダルの追及は少数派にとどまっている。このため、野党内にも「スキャンダル追及ばかりでは、国民の支持は得られない」(立憲民主若手)との弱気の声も出始めている。

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