ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の地政学コラムニストであるウォルター・ラッセル・ミードは、「もし、プーチンがウクライナで核を使ったらどうするべきか(What if Putin Uses a Nuclear Weapon in Ukraine?)」というコラムで、「プーチンとしては不名誉な負けを受け入れるか、もしくは、何としても勝利すべくすべての手段を投入するかのどちらかしかない。徴兵をしても戦況を変えられなければプーチンが核を使用する可能性は十分ある」と分析している。
『Foreign Affairs』誌は、「ウクライナでのプーチンの次の動き(Putin’s Next Move in Ukraine)」というコラムで、「例え、プーチンが徴兵を行い、兵力を拡大しても戦死者が増えるだけで、戦況を変えることはできない」と分析している。
また、同コラムの中で、「歴史的にロシアは、ナポレオンやヒットラーに対抗した自国防衛戦には強いが、日露戦争やアフガニスタン侵攻など仕掛けていった戦争(war of choice)では成功していない」と述べている。他の手段で成功できないプーチンが核に頼る可能性は排除できない。使うとすれば、戦場単位で使用する戦術核兵器であるというのが大方の見方である。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、ロシアは核弾頭を5977個保有、アメリカを549個を上回り、世界最大の核兵器保有国だという。プーチンは、その国の追い詰められた独裁者である。世界は、1962年のキューバ危機以来の大きな核リスクに直面していると言ってよい。
アメリカが取れる対抗策
プーチンが核を使った場合、アメリカはどう出るか。何もしなければ、北朝鮮や中国に誤ったサインを送ることになり、世界が核使用を通常的な戦闘手段として考えるようになってしまう。
バイデン大統領は「結果のある対応をする」(the U.S. response would be “consequential,”)と述べている。しかし、核を使って報復をするとロシアもアメリカに核で報復することになり、米ロの全面核戦争になる。同盟国でもないウクライナのためにそれはできないだろう。ウクライナに核兵器を提供するという選択も考えにくい。
先述のWSJのコラムでは、「速やかにウクライナをアメリカの“核の傘”の中に入れる手がある」と述べている。すなわち、ウクライナとアメリカが軍事同盟を結び、もし、ウクライナがロシアから核攻撃されれば、アメリカに対する攻撃とみなすと述べ、ロシアの核使用を抑止するという考えだ。
確かに核の脅威をちらつかせ「これは脅しではない」と述べるプーチンに対応するには、これしかないかもしれない。ただ、現実的には、アメリカにとってこの選択肢はそう簡単ではないだろう。また、アメリカ一国に世界リスクの解決を委ねるというのも時代錯誤の感がある。
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