保護ウサギ200匹が物語る「多頭飼育崩壊」の惨状 知識不足で飼育「こんなはずでは…」という例も

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また、行政の対応にも問題がありました。ウサギによる多頭飼育崩壊は神奈川県では初の事例であったため、飼い主からのSOSがあったものの対応に遅れが生じ、さらに繁殖が進んでしまったのです。

SOSを受けたすぐあとに「とりあえず、これ以上増えないように1匹ずつ分けて飼育してください」と、その方法も含め飼い主に指導する必要があったのではないでしょうか。「緊急性を持って対応すべき案件だった」と反省の弁を述べていますが、県の担当者の知識不足も否めません。

「手間がかからない」イメージが仇に

ウサギは犬や猫に続いて飼育数が多いとされている哺乳類です。人気の理由はもちろん「可愛いから」ですが、「手間がかからない」「飼いやすい」というイメージから飼い始める人が多いようです。

しかし、長年にわたりウサギの飼育経験がある筆者には、そのイメージはありません。個体差はありますが、かじれそうなものはかじって破壊します。床やカーペット、ラグマット、壁などを掘って傷つけます。床には穴が開きました。換毛期には大量の毛が抜けるので、掃除が大変です。部屋で運動させると、あちこちで排泄します。

ストレスや環境の変化に弱いので、よく体調を崩します。寒さや暑さ対策は必須で、電気代がかかります。基本的には抱っこは苦手で、鳴かないので感情が読みにくい。気性が荒い子もいます。

骨はとてももろく、少し高い所から飛び降りた、ドアに挟まれた、ケージ内で暴れたなど、些細なことで骨折します。筆者が飼っていたウサギは玄関の踏み台から落ちて、後足を骨折しました。手術はせずに済みましたが、ギプスをはめることになってしまいました。

また、ウサギの寿命は7~8年といわれますが、今はフードも飼育環境もいいので、10年以上生きることもあります。当然に老化は訪れるので、介護が必要な場合もあります。ウサギを飼うのであれば、犬や猫と同じように事前に特性や病気などを学び、前述したマイナス面も理解する必要があると思っています。

滋賀県の動物愛護管理法違反(遺棄)の件は、飼い主が何の知識もないままに「手間がかからない」というイメージから安易に飼い始め、実際とのギャップからその行為に及んだものです。命を粗末に扱う「捨てる」という愚行は許しがたい犯罪です。

筆者が小学生の頃は、多くの小学校で動物が飼育されていました。筆者の通う学校にもニワトリ、アヒル、キジ、ホロホロ鳥、インコ、ウサギ、モルモットなどがいました。

飼育委員だった筆者は放課後に動物たちの世話をするのですが、その生態や飼育方法などは、みんなで事前に勉強しました。クラスでは飼育報告はもちろん、意見交換しながらみんなで動物たちのことを考えました。動物を愛おしいと思う気持ち、動物の死に直面して悲しいと思う気持ちなど、「愛情」と「命」の大切さを身をもって知りました。筆者がペットジャーナリストとして活動する原点はここにあり、いい経験をさせてもらったと思っています。

しかし、大手前大学現代社会学部中島由佳准教授の論文「小学校における鳥インフルエンザ後の動物飼育状況―全国調査」によると、動物を飼育していない小学校が増加傾向にあることがわかりました。

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