JR只見線「11年ぶり」復活、地元住民たちの執念 利用者少なくても観光による「経済効果」大きい

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第一只見川橋梁を渡るディーゼルカー(写真:星賢孝)

2011年7月の新潟・福島豪雨で甚大な被害を受け、福島県の会津川口―只見間27.6kmで運休が続いていたJR東日本の只見線の運行が2022年10月1日から再開され、会津若松(福島県)―小出(新潟県)間135.2kmが11年ぶりに1本のレールで結ばれた。復旧区間を運行する列車は被災前と変わらない1日3往復だ。

復旧費用の約90億円は国、福島県と会津地方17市町村、JR東日本で3分の1ずつを負担。また、同区間は福島県が鉄道施設を保有する上下分離方式が取られ、会津若松駅構内に県の出先機関となる只見線管理事務所が開設された。復旧後に年間約3億円かかる運行経費も福島県と会津17市町村が負担する。只見線復旧までとこれからの取り組みについて関係者を取材した。

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官民を挙げた取り組み

只見線の復旧に向けては、官民を挙げた取り組みがあった。民間で中心的な活動を行ってきたのは、会津川口駅のある福島県金山町在住の奥会津郷土写真家で、奥会津かねやま福業協同組合事務局長を務める星賢孝さん(73歳)だ。星さんは47年間、地元の建設業に携わってきほか、30年ほど前から郷土写真家として年間300日間、只見線の写真だけを撮り続けている。近年はSNSを通じた情報発信を続けており、県の補助金などを活用しながら自費での海外PR活動も行っている。

星さんは「写真を撮り続けている中で只見線が入ることで景色に魂が入ることに気付きました」。その理由は「鉄道が入ることで写真を見る人それぞれが家族や恋人との旅行、集団就職などの思い出を投影することができること」だったとこれまでを振り返る。

こうした取り組みが功を奏し、トラス構造のアーチ橋が特徴的な第一只見川橋梁が有名な撮影スポットとなったほか、台湾在住のインフルエンサーの目に留まったことで、2016年頃から只見線を訪れる台湾や東南アジア各国からの外国人旅行者が急増。只見線があることで地元の飲食店や宿泊施設にもたらされる経済効果が無視できないことが分かると「只見線の復旧・存続に反対する地元の声も次第に減っていった」(星さん)という。

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