JR只見線「11年ぶり」復活、地元住民たちの執念 利用者少なくても観光による「経済効果」大きい

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2019年には、只見線全線復旧に向けての機運を盛り上げようと星さんらが中心となり映画製作を開始。星さん自らの出資に加えクラウドファンディングなどを通じて約1000万円の制作費を集め完成したのはドキュメンタリー映画「霧幻鉄道」。2022年7月から全国で順次公開された。

奥会津郷土写真家の星賢孝さん(写真:星賢孝)

2011年の被災当初、只見線の復旧に向けてJR東日本側の動きはなかったが、2013年には、行政側も、福島県知事と周辺自治体の首長がJR東日本に対して只見線の復旧・存続を要請。併せて、只見線の復旧費用を捻出するため国に対しJR東日本に対する財政支援を求めたほか、地元の覚悟を示すため県独自に「只見線復旧基金」を創設し約24億円を集めた。内訳は福島県と周辺自治体の拠出金が約21億円。民間企業や募金活動による寄付金が約3億円で福島市内に本店を置く東邦銀行も1000万円の寄付を行った。

2015年には福島県と周辺自治体は、只見線の運転を再開した際に生じる赤字額をJR東日本に対して補填する調整に入り、2016年に只見線の不通区間を鉄道として復旧し、福島県が鉄道施設を保有する上下分離方式により存続させる方針が決定された。

実現した鉄道軌道整備法の改正

2011年被災当時の鉄道軌道整備法では、民営鉄道の災害復旧費用は原則、鉄道会社の全額負担。赤字会社であるなどの一定の要件を満たした場合のみ国や地方自治体からの補助が2分の1まで認められた。つまり黒字会社のJR東日本が運営する只見線の復旧費用については原則、その全額がJR東日本に求められる。

同年3月に発生した東日本大震災では、赤字会社の三陸鉄道(岩手県)は早期に鉄道として復旧できたものの、黒字会社のJR東日本が運営する山田線(岩手県)は復旧決定が遅れたほか、気仙沼線と大船渡線の柳津(宮城県)―気仙沼(宮城県)―盛(岩手県)間116.5kmは鉄道としての復旧が断念されBRT(バス高速輸送システム)化。三陸鉄道とJR東日本の運営路線で「復旧格差」が生じることとなった。

そのような中、只見町長をはじめ地元からの要望を受けた会津若松市出身の菅家一郎衆議院議員は、国土交通省鉄道局長とJR東日本に対して只見線の復旧ついて要請を行うが、国交省からは「法律的に支援はできない」、JR東日本からも「鉄道として復旧はしない」という方針を示され八方ふさがりとなる。

しかし、その後、自民党有志の国会議員とともに「赤字ローカル線の災害復旧等を支援する議員連盟(通称:鉄道議連)」を立ち上げ活動を始めた結果、福島県知事だけではなく、熊本地震や九州北部豪雨での被災路線を抱えた福岡、大分、熊本各県知事からも法改正への強い要請があり、2018年、議員立法により全会一致で鉄道軌道整備法の改正が実現、一定の要件を満たせば黒字会社であっても適用可能とした。

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