できる人ほど「予定に空白を入れておく」深い理由 グーグルも注目する「戦略的小休止」の効用
燃え上がるために必要なもの
私は火の熾し方を知らない子どもだった。マンハッタンで育つのに必須のスキルではないから。エレベーターで階から階へと移りながら「トリック・オア・トリート」をする(そしてお菓子をもらう)方法なら覚えたし、《レイズ・ピザ》のスライスを上手に折りたたんで、ギトギトの脂を紙ナプキンに落としながら食べるコツも3歳になるまでに身につけた。けれどアパート暮らしの子どもは、何か特別にまずいことでも起きないかぎり、火の熾し方は学ばない。
それから月日は流れ……3人の子の母となってからのこと。私は夫と息子たちと、ロサンゼルスの自宅からそう遠くないビッグ・ベア湖のほとりの山小屋へ向かっていた。山小屋は、わざわざ車を走らせる甲斐があるものだった。美しい木立に囲まれた場所で、巨大な窓があり、幅の広い重厚な石造りの暖炉が火をつけられるのを待っていた。
暖炉があると知った息子たちは興奮して飛び跳ねていた。ただあいにく薪はなく、燃やす知識もない。夫は町に出かけている。
湖畔のロッジの、ドイリーが敷かれた丸テーブルにこんなお知らせが置いてあった。
「薪のご入り用は×××まで! 10分以内にお届けします」
その場で携帯電話を取り出してメッセージを送ると、まるですぐそこの角で待っていたかのようなすばやさでチャーリーがやってきた。チャーリーは、私とまわりで歌いながら飛び跳ねている息子たちに、火を熾すときは燃料を重ねて置くとやりやすい、と教えてくれた。まず小さな紙を敷き、乾いた松葉を火格子に乗せて着火剤をいくつか置くと、早く火がつく針葉樹とゆっくり燃える広葉樹の2種類の薪をその上に積む。
ところが彼は、1つ重要な燃料について言い忘れていた。空間だ。
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