できる人ほど「予定に空白を入れておく」深い理由 グーグルも注目する「戦略的小休止」の効用

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夫が戻るまでの20分間、私たちは手に入るかぎりの可燃物を隙間なくきっちり積み上げ、マッチを投げ込んでは火を熾せずにいた。

夫は焦げた薪の小山に目をやると、くしゃくしゃになった紙マッチを私の手からそっと抜き取り、燃料を積み直し始めた。松葉をふんわりと盛り、着火剤を互い違いに並べ、薪をティピ型(三角錐のテントの形)に組んで、火を熾すのに必要な空気の通り道を完璧に作ってみせた。するとどうだろう、たった1本のマッチで、薪は豪快な音を立て始めた。息子たちはマシュマロを1袋まるまる焼き、私は貴重な学びを得た。

火になくてはならないもの、それは、可燃物のあいだの空間(スペース)であると。

「空白」が見当たらない毎日の仕事

炎が着火し、燃え続けるためにはスペースが必要だ。けれど私たちはこの自然の法則を、暖炉以外の人生のあらゆる場面、とりわけ仕事の場面で忘れてしまっている。

スケジュールはテトリスのゲーム終了寸前さながらに積み上がり、もはや頭の中だけに収まりきれず、何十もの用足らずのメモアプリにあふれ出ている。火を燃え立たせるための酸素はどこにもない。マッチというマッチを擦り、能力を限界まで引き出そうと必死だが、良い仕事をするのに必要なのはマッチよりもむしろ、ほんの少しの息つく余裕なのである。

スペースがなければ、私たちはやっていけない。不眠不休でまともな仕事ができるはずがない。市場の流れを変える画期的なアイデアも、それによって受けられるはずの栄誉も、忙しさに阻まれて手にしそびれている。日常のふとした隙間に生まれる偶然やひらめきなどの人間らしい瞬間も、その隙間自体がないために逃している。

「もっとやろう」と自分を追い立てるうち、私たちは、かつて1日のバッファーとなっていた自由で柔軟な時間を失ってしまっているのだ。

自由な時間を失った結果、現代人は偽りの生産性に浮かされて日々猛進し、その仕事を本当にすべきかどうかもわからないまま脅迫的にリストを消化している。余計な時間は1秒だって余ってはいない。それどころか、ほとんどの時間はダブルブッキングだ。緊急性という暴君により、現代人はあらゆる形の日々のプレッシャーやストレスにさらされ、しかも問題を解消する時間すら見つけられずにいる。

悲しいかな、私たちはあまりに忙しすぎて、その忙しさから抜け出すことができない。寝つけない深夜の布団の中だけが、その日唯一の予定が入っていない、考えにふける時間を授けてくれる。

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