日本が企業の国際競争力低いのに「高評価」の意外 製造業主体でIT化遅れ「昭和の遺産」で食べてる?

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例えばアメリカのメディア「U.S. News & World Report」が毎年発表している「世界最高の国ランキング(Best Countries 2021)」によると、日本は第1位のカナダに次ぐ世界2位となっている。76カ国、17000人以上を対象に行われた調査で、「社会的目標」「市民の自由度」「文化的影響力」「ビジネスの開放度」など10項目に続いて評価がランキングされている。この中でも日本が高く評価されているのが、次のような項目だ。

●起業家精神(Entrepreneurship)…… 1位
●文化的影響力(Cultural Influence)…… 5位
●発動力(Movers)…… 6位
●政治・経済的な影響力(Power)……6位
●経営や組織の機敏性(Agility)…… 7位

起業家精神が世界一になっているところに注目したいが、日本のビジネス界にもやっと地殻変動が起きているのかもしれない。考えてみれば、学校を卒業して大企業に入ったところで、出世できる可能性は極めて低く、出世したとしても歴代の社長がやってきたことからなかなか逸脱できない。それなら自分で会社を作ってチャレンジしたほうが、可能性は広がることを今の若者は感じているのだろう。

パリに本社がある大手調査会社「イプソス」が、2021年10月に発表した「国家ブランド指数(NBI)」によると、日本は5年連続1位のドイツ、そして2位のカナダに次ぐ3位だった。文字どおり、国家のブランド力を示す指数だが、「国民性」「観光」「文化」「輸出」「ガバナンス」「移住・投資」という6つの分野における魅力度を指数化したものだ。

昭和時代のレガシーは国際的に通用している

要するに、日本が昭和時代に築き上げてきたレガシーはいまだに国際的には通用している、ということだ。問題は、その遺産を食い尽くしてきた平成時代の政府や企業活動が、令和の時代になってさまざまな形で限界を迎えつつあることを示している。むろん、平成の30年間は、昭和の世代が残した「宴のあと」であり「負の遺産」だった。

ただ、昭和世代の成功体験を持つ自信満々の人々に対峙するのは大きな労力であったろうし、その部分でもビジネスの効率化を喪失してしまったのではないか。

日本の大きな問題は、ビジネスと政府の効率性が一向に改善されていないことだろう。冒頭に示したIMDの国際競争力ランキングを見ると、2022年版で初の第1位となったデンマーク、2021年に首位だったスイスなどと比べると、制度的な枠組みやビジネス法制、社会的枠組みの分野で、日本は圧倒的に弱い。極端に言えば、政治家や行政がこの30年間、ほとんど仕事らしい仕事をしていないともいえる。

さらに、デンマークは「サステナビリティ・ファースト」を掲げて、未来をしっかりと見据えた環境ビジネスに力をいれている。どれも日本に不足しているものだ。国際競争力の衰退が、円安に拍車をかけていると感じるのは、筆者だけだろうか。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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