インフレに慌てる日本を襲う「次なる危機」の正体 「スタグフレーション」に転落する瀬戸際

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値上げの幅は製品によって異なりますが、10%程度の値上げ幅を設定する企業が多いようです。帝国データバンクの調査でも似たような結果が得られています。同社が主要食品メーカー105社に対して販売価格の調査を行ったところ、2022年4月までに値上げを実施した品目は4000を超えており、平均的な値上げ幅は11%でした。

値上げ幅が一定範囲に収束していることには理由があります。消費者に販売する最終製品とは異なり、企業が仕入れる商品(原材料など)は、高い頻度で価格が上がります。しかし、原材料価格が上がるたびに最終製品の価格を調整していては、消費者が混乱してしまいます。企業にとっても、価格を上げた場合、どの程度までなら売上高が落ちないのか、最終的な損益はどうなるのかなど、事前に調査する必要があるため、価格改定をしすぎると非効率になります。

このため、企業としてはある一定範囲を超えてコストが上昇した場合でも、消費者へのインパクトを考慮に入れて値上げ幅を決定します。1割程度の値上げが、おそらく消費者が受け入れやすいギリギリの範囲であり、結果として、値上げ幅は10%程度に収束しているのです。

この話を逆に考えれば、企業はコスト上昇分を吸収できるまで、10%程度の値上げを何度も繰り返す可能性が高いということになります。すでにパンや食用油はそうなっていますが、今後も原材料コストの上昇が続いた場合、10%程度の値上げが複数回実施されると考えてよいでしょう。

単なるインフレではない

日本は過去30年にわたってデフレが続いていましたから、多くの人がインフレというものの現実についてよく理解していません。

これまでの時代は、デフレさえ脱却すれば日本経済が鮮やかに復活するという安易な主張をよく耳にしましたが、インフレはそのような生やさしいものではありません。いったん、制御できないインフレが始まってしまうと、国民生活にはきわめて大きなダメージが及びます

さらに恐ろしいのは、スタグフレーションです。スタグフレーションとは、「スタグネーション(景気低迷)」と「インフレーション(物価上昇)」の合成語であり、景気が後退するなかでインフレが同時進行する経済現象を指します。スタグフレーションに陥った場合、ほとんどの経済政策が効果を発揮しなくなり、その回復はきわめて困難です。

実は、先進各国のなかでスタグフレーションのリスクがもっとも高いのが日本です。日本の場合、景気の低迷が長く続いており、企業の仕入コスト上昇を製品価格に転嫁しにくい状況にあります。コスト上昇分を価格に転嫁できなければ、賃金も上がりませんから、消費者は購買力を高めることができません。加えて為替市場では急ピッチで円安が進んでおり、輸入品の価格上昇によって国民生活はさらに苦しくなっています。

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