インフレに慌てる日本を襲う「次なる危機」の正体 「スタグフレーション」に転落する瀬戸際
たとえば200円の価格で内容量が10個だったお菓子が、価格は同じ200円のまま、内容量を8個に減らすといった措置がこれに該当します。こうした値上げを、ちまたでは「見えにくい値上げ」という意味で「ステルス値上げ」などと呼んでいます。
同様に、価格を据え置きつつ、使用する素材の質を落とすという形でコストを削減する方法もあります。従来は、150円のキッチンペーパーはB品質、200円のキッチンペーパーはA品質だったと仮定しましょう。企業は製品ラインアップを一新する際、200円のキッチンペーパーにB品質の素材を用い、従来200円の製品で使っていたA品質の素材は、さらに価格が高い300円のキッチンペーパーで使用します。
製品の品質について吟味する消費者であれば、質が下がったことがわかりますから、お金に余裕がある人は300円の商品に切り換えるでしょう。いっぽう、そこまで品質を気にしない人の場合、従来と同じ価格帯である200円の商品を継続購入すると考えられます。製品体系全体で考えれば、より高い価格帯にシフトできたことになりますから、実質的な値上げということになります。
本来、こうした値上げは正攻法ではないのですが、不景気が長く続いた日本では、名目上の値上げを決断しにくく、見えにくい形での値上げが続いてきました。実際、2020年あたりからステルス値上げが目立つようになっていましたが、2021年までは名目上の値上げに踏み切る企業は少数派でした。
2年間、ステルス値上げで何とか我慢してきたものの、いよいよコスト上昇に耐えられなくなり、各社がいっせいに名目上の値上げに踏み切ったのが、2022年春だったのです。
物価はさらに上がる
それでは、どのような商品の価格が上がったかを具体的に見てみましょう。
図は1月以降、値上げを実施した製品やサービスのリストですが、食品類が多く、小麦粉や食用油など基本的な食材を使用する製品の値上げが顕著であることがわかります。パンや食用油はすでに複数回値上げを実施しているケースもあり、ほかの商品でも今年中に複数回の値上げが行われる可能性があります。
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