日本人は「資本主義の怖さを知らなさすぎる」の訳 マルクス主義はソ連と中国とはまったく異なる

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富裕層が便利で贅沢な暮らしをするために、大量のエネルギーや資源を使っている。たとえば、プライベートジェットに1人で乗るのに、わざわざ膨大な燃料を消費して、鉄の塊を飛ばしています。「持てる者」たちの、「快適さ」を追求するために、とんでもないエネルギーの浪費が行われているわけです。けれども、彼らは気候変動の影響をほとんど受けません。犠牲になるのは、いつも貧しい人たちなのです。

だから、もっと平等で、持続可能な社会をつくっていかないと、金持ちのせいで、私たちの生活は脅かされてしまう。地球を犠牲にしながら、富める者たちが、より富むようになっていくという資本主義の仕組みは「限界」を迎えつつあるのです。

たぶん、環境危機の問題と不平等の問題が、密接に関係していること、そしてそれが資本主義の欠陥と関係していることは、うすうすみなさんも気づいていると思います。新しい社会に移行したいという気持ちが、日本でも高まっているのだと思います。

ソ連は「社会主義」ではない

繰り返しますが、ソ連のほうがよかったなんていいたいわけではもちろんありません。そもそもソ連や中国の問題点とはなんなのでしょうか。彼らのマルクス理解は、大雑把にいうと次のようなものでした。

まずみんなでどんどん経済成長するために、技術革新を起こし、生産力を上げていく。しかし、資本主義だとせっかく生み出した富がすべて資本家たちによって独占されてしまい、労働者たちは貧しいまま。そこで、革命により資本家たちを排除すれば、社会の富を全員でシェアでき、誰もが豊かな生活ができる。

……なので、ソ連や中国は技術の発展と生産力の向上を徹底的に志向したわけです。しかし、それで社会主義になるというのは、幻想です。

飢餓や病気を抑えて生存するために、ある程度まで経済成長や技術発展が必要なのは当然です。しかし、経済成長だけを求めると、労働者たちは酷使され、ものすごい環境破壊が引き起こされます。「資本家打倒」という反米のお題目を唱えて、人間も自然も犠牲になる。実際、ソ連ではアメリカや日本よりもひどい人権問題や環境破壊が起きていました。

では、なぜこのようなことが起きたのか。それはソ連が「社会主義」ではなかったからです。

「とにかく生産力を上げて、経済成長しよう」という幻想に陥った結果、やっていることは資本主義とあまり変わりませんでした。ただ、資本家支配が官僚支配に置き換えられただけだったのです。これは私が目指す社会とはまったく違うものです。ソ連が崩壊し、資本主義が地球環境を破壊している今だからこそ、私たちは改めて、資本主義の問題点を解決するために、マルクスに立ち返るべきなのです。

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