もう1つの理由は、前述のイメージとも関連しますが、ソ連や中国を唯一の資本主義への代替案と見なすことで、「資本主義ではない社会」への想像力を私たちが失っているからです。
つまり、みなさんに考えてみてほしいのは、「社会主義は最悪」という固定観念のせいで、「だから資本主義しかない」と思わされている可能性です。「マルクス主義や社会主義はやばい」と信じることで、「日本最高じゃん」「アメリカみたいになろうぜ」というマインドになってしまっているわけです。
けれども、本当に日本は最高ですか? こんなに格差や不平等があるのに?
今、民主主義も脅かされています。せっかく、これだけ技術も発展したのだから、もっと平等で自由な社会の可能性を考えてみてもいいと思います。そして、そのヒントを与えてくれるのがマルクスなのです。
資本主義のもとで生じている問題
資本主義のもとで現在生じている問題は、ざっくり大きく2つあります。
1つは格差が圧倒的に広がってしまっていること。
特にアメリカで顕著ですが、ジェフ・ベゾスやマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスクといった一部の成功者がものすごい資産を持っている。プライベートジェットを乗り回し、いくつもの豪邸を世界中に持っているわけです。宇宙にも行こうとしていますよね。しかも彼らは、コロナ禍にますます資産を増やしている。
一方で、コロナ禍で職を失い、一気にホームレスに転落したりなど、苦しい生活を強いられている人が、日本やアメリカにもたくさんいます。
そこまでではないにしても、仕事があり、衣食住が保証されている私たちもとても豊かだとはいえません。月々の家賃を払って、携帯電話の料金を払って、何回か飲み会をしたら、財布はすっからかん。そんなカツカツの生活しか送っていないじゃないですか。ものすごい長時間労働を強いられ、いつクビになるかわからないという不安を抱えて必死に働いているにもかかわらず。そんなクソみたいな社会でいいのかという話です。
もう1つの危機は、気候変動が深刻な問題となっていることです。
このままのペースで気候変動が進めば、今世界中で起きている異常気象は、山火事や洪水のような自然災害のみならず、水不足や食糧危機をもたらしますし、難民問題も引き起こします。若い世代や途上国に住む人たちにとっては、文字通り死活問題になるような大きな環境変化が起きるでしょう。もう気候変動問題は、本当に一刻の猶予もないところにまできています。
そしてここにも、経済格差の問題が隠れています。
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