日・台における台湾有事の際の日本国民退避計画の策定もよりハイレベルの協議が必要であろう。では22演習における台湾政府と市民の対応を日本はどのように評価し、何を学ぶべきだろうか。
米台の連携と台湾の対応
まず22演習が発表された経緯を振り返ってみよう。習近平は7月末にアメリカのバイデン大統領とのテレビ会議において「火遊びをする者はやけどを負う」と警告しており、ペロシ訪台が実現した際には必ず何らかの措置を取ると予想されていた。22演習の規模と発表のタイミングからみれば、中国は検討していた軍事計画を繰り上げて実行したと考えられる。にもかかわらず、蔡政権の反応は控えめで、アメリカも演習後の8月27日に誘導ミサイル巡洋艦2隻を台湾海峡に通過させたのみであった。
他方で蔡政権の立場からすれば、ペロシ氏の訪台を自ら拒否できる立場にあったわけではまったくない。むしろホワイト・ハウスとの協調により、予想される軍事的圧力にいかに対処するかを考えたはずである。
前述したドローンの撃墜に対してもアメリカは理解を示した。ペロシ訪台後から9月にかけて、エドワード・マーキー上院議員、エリック・ホルコムインディアナ州知事、マーシャ・ブラックバーン上院議員、ダグ・デューシーアリゾナ州知事、ステファニー・マーフィー下院議員らが訪問団を率いるなど、多くの政治家が台湾を訪問した。蔡政権はアメリカと十分に調整をしたうえでドローンを撃墜したと考えて間違いないだろう。
シャープパワーをめぐり台湾にはどんな備えがあったか
台湾にはどのような有効な備えがあったのだろうか。台湾政府は2013年から政府機関や通信インフラの整備における中国製の部品調達を禁止してきた。2019年1月から交通運輸、エネルギー、情報通信科学、金融、政府機関、国家安全保障、医療衛生、民生用のインフラにも中国製の部品の使用を禁止している。そのため22演習の際に、政府機関と重要インフラには乗っ取りのような被害がなかった。
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