ペロシ訪台への反撃で日本も習近平の攻撃目標に 益尾知佐子氏「ミサイル演習は日本への脅迫だ」

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ペロシ議長の訪台で火が付いたナショナリズムを、中国の習近平主席は政権基盤強化に使おうとしている(写真:Bloomberg)
アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問に中国は激しく反発。8月4日から7日の予定で台湾周辺の6カ所の空・海域で軍事演習を始めた。同日には中国軍の弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下。それ以外にも、沖縄・与那国島の北北西80キロメートルに落下したミサイルがあった。緊迫する台湾海峡両岸の情勢をどう読み解くべきか、中国の対外政策に詳しい九州大学の益尾知佐子准教授に聞いた。

――今回の軍事演習に際し、日本などG7(先進7カ国)の外相は4日に「力による一方的な現状変更をしないよう求め、また、両岸の相違を平和的手段で解決するよう求める」との声明を出しました。中国はこれに反発し、同日にカンボジアで予定されていた日中外相会談をキャンセルしました。

設定された6カ所の演習区域のうち3カ所は、台湾が主張する領海に食い込んでいる。いちばん近い場所では台湾島からの距離が20キロメートルしかない。こうした場所での軍事演習は、客観的に見て「現状変更」である。

中国は最近、「台湾海峡に国際水域はない」などと主張してきた。アメリカは中国の海域主張は過大で、国際法に基づいていないと批判していた。そのためアメリカ海軍の艦艇を派遣する「航行の自由」作戦などでその無効化を試みていた。最近もミサイル駆逐艦「ベンフォールド」が南シナ海北西部のパラセル(中国名:西沙)諸島付近で、中国が主張する領海の中を航行したばかりだ。

それだけに、アメリカ軍の活動範囲の縮小をもくろむ中国側の軍事行動を、アメリカがずっと座視し続けるとは考えにくい。何らかの対抗措置が準備されていくだろう。今回のショッキングな台湾危機をきっかけに、米中の新冷戦はもう始まったということだ。

台湾の周りで何をしようが中国の勝手?

――なぜ、中国はそこまで挑発的な反応をしたのでしょう。

中国からすれば、ことさら挑発しているつもりはないのではないか。中国人は、「台湾は自国の領土なのだから、その周辺で何をしようが他国に文句を言われる筋合いはない」と考えている。中国共産党は国内で人民をそう教育している。

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