ペロシ訪台への反撃で日本も習近平の攻撃目標に 益尾知佐子氏「ミサイル演習は日本への脅迫だ」

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――日本はどうするべきでしょうか。

8月4日に予定されていた日中外相は、日本を含むG7が中国を非難する決議を出したという理由でキャンセルされた。外相会談は日本が提案したもので、2日に開催が発表されたばかりだった。中国が日本を罰するため、日本の提案を直前にはねのけた形だ。

今回中国が設定した演習区域のなかには、沖縄県の与那国島からすぐの場所もある。日本の設定したEEZの中にミサイルが5発落下した。明らかに日本への脅迫だ。

しかもこれについて中国外交部のスポークスウーマンは、日中間ではまだ海洋画定がなされていないため「日本のEEZ」は存在しないと述べた。これは自分の権利のみを主張し、他国に対等な権利を認めない悪質な発言だ。中国はすべての海域で過度に大きな管轄権を主張しており、中国が主張する「管轄海域」の半分は他国との係争海域だ。

中国は日本との間では、東シナ海のほとんどを自分のものだと主張している。それが法外に大きく、加えて1971年から急に尖閣諸島の領有権まで唱え始めたため、東シナ海の画定交渉は進んでいない。仕方がないので、日本は中間線を自国のEEZの境界として取り扱ってきた。

しかし中国は、まだ統治してもいない台湾を完全に自分のものとみなした上に、日本が当然有しているEEZの権利すら無視している。それくらい、中国は今回、日本に対して敵対的な言動をとっているということだ。日本はおそらく、中国にとって台湾に次ぐ中国の第2の攻撃目標になったのだろう。

日本は重大な岐路を迎えている

こうしたニュースに日本人がいつまで平静でいられるだろうか。これから数日で、社会の雰囲気がガラッと変わってしまうかもしれない。

日本は台湾有事への備えをいっそう強化せざるを得ないだろう。憲法改正論議にまでつながる重大な岐路を日本は迎えているのではないか。

 しかし軍事衝突があれば第3次世界大戦になりかねない。台湾をめぐる日米中の利害対立の全体をマネージする努力が必要だ。日中でいえば首脳同士が往来することが大事だが、現実には日中間では外相の対面会談すら1年9カ月も開かれていない。

意見の違いを確認しながら、戦争にエスカレートしないようコントロールする仕組みが必要だ。まずは日中の首脳がきちんと話をすることだ。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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