ペロシ訪台への反撃で日本も習近平の攻撃目標に 益尾知佐子氏「ミサイル演習は日本への脅迫だ」

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しかし、米中国交正常化の際、アメリカは「台湾は中国の一部」と中国が主張していることを「認識する(acknowledge)」と言っただけで、中国が主張するような形で「一つの中国」を認めたことはないし、台湾という空間を他の政権が現に有効に統治しているという事実を否定したこともない。日本も同様だ。

ますお・ちさこ/1974年生まれ。東京大学博士。日本国際問題研究所研究員などを経て2008年より現職。専門は国際関係論、中国の対外政策。著書に『中国の行動原理』(中公新書)など

中国は最近、「一つの中国」は国際的に認められた原則だとまで主張しているが、明らかに言い過ぎだ。中国には自分たちの国内向けの宣伝が、国際的にも通用すると錯覚する傾向がある。台湾の領海に軍事演習地域を設定するという判断にはそうした感覚のずれが露呈している。アメリカがこのまま矛を収めるとは思えず、中国は完全に情勢を読み間違え、国際的な緊張を無用に高めていると思う。

中国にはさまざまな研究者やシンクタンクが共産党指導部に政策を提言し、多様な意見を意思決定に反映させる仕組みがあった。しかし、「ゼロコロナ」政策のもとで海外との交流が極めて限定され、習近平政権の独裁傾向も強まったため、党指導部への情報インプットが質・量ともに低下しているようだ。

そのため習近平政権は、アメリカが中国の殲滅を狙っているという陰謀論的世界観に沿い、ペロシ訪台の意義を非合理に拡大解釈したのではないか。ペロシ議長とバイデン大統領が最初から結託して台湾政策の変更を狙ったと判断していたのかもしれない。

国内政局で追い込まれた習近平

――中国にとってペロシ訪台は、共産党指導部や長老が重要政策を議論する「北戴河会議」が行われる微妙な時期でした。さらに秋には5年に一度の党大会が控えています。

このところ、習近平国家主席は国内で不利な立場に追い込まれていたのではないか。7月26日から27日まで、習主席は北京で閣僚や地方政府のトップを集めた大型の会議を開いた。

報道された映像をみると異様に沈滞した雰囲気で、反感をうかがわせる眼差しで習主席を見つめる者もおり、主席自身も表情に精気がない。おそらく国内で、いま何か政治的な動きが起きている。

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