新観光列車「ふたつ星」が握る西九州新幹線の命運 報道公開で明かされた最も重要な要素とは何か

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西九州エリアの盛り上げは車両投入にとどまらない。新幹線が通らないエリアにおける観光振興にも力を入れる。

たとえば、ふたつ星の午前ルートである長崎本線の肥前浜。酒蔵が建ち並ぶ伝統的な町並み「酒蔵通り」や日本三大稲荷の一つ、祐徳稲荷神社といった観光地の玄関口として知られる。行政と地域が連携して駅舎を改修、全国初という駅ホーム直結の日本酒バーを設置した。JR九州も明治期に建てられた古民家を改修して宿泊施設に仕立て上げた。ふたつ星は肥前浜で17分停車するので、駅周辺を散策するには十分時間がある。古い街並みを気に入った観光客がリピーターになって、次回は肥前浜に宿泊するかもしれない。

佐賀や長崎で魅力ある街づくりに尽力する人や団体を表彰する「西九州観光まちづくりアワード」を実施した。5月から6月にかけて募集を行い、選考の結果、佐賀県嬉野市で嬉野茶、肥前吉田焼、温泉の魅力を全国に発信する「嬉野茶時」と長崎県雲仙市で地元産野菜の消費拡大に取り組む奥津爾さんが大賞に選ばれた。

9月9日には都内で表彰式が開催され、人気お笑いコンビの博多華丸・大吉もお祝いに駆けつけた。古宮社長も「2週間後の9月23日には西九州新幹線が走っているはず。走らなかったら私はクビになります」と発言、会場からプロの芸人に負けないほどの笑い声が上がった。

「新幹線効果」をどう持続するか

翌日の10日には、西九州新幹線の試乗会が行われた。佐賀駅を出発した「リレーかもめ」は武雄温泉駅で新幹線「かもめ」と対面乗り換えを行い、大勢の報道陣を乗せた新幹線列車が長崎に向けて出発した。

武雄温泉駅進入
武雄温泉駅のホームに進入する「リレーかもめ」先頭からの眺め。左側に西九州新幹線「かもめ」が停車している(記者撮影)

最高時速260kmで走行し乗車時間はわずか31分。大半はトンネル内を走行するが、時折姿を見せる大村湾や山々の景色が目にまぶしい。「揺れが少なく快適な乗り心地です」――。6両の車両のあちこちでTV局の女子アナが車内の様子をリポートしていた。新聞、雑誌などの記者はスマホの速度表示アプリで現在の速度を確認しながら車窓の様子などをメモしていた。

事前の期待が大きいだけに、開業直後は盛り上がるはずだ。ではそれが持続するかどうか。重要なのはリピーターの獲得だ。そのカギを握る要因の1つが、観光列車やPR施策などを駆使してJR九州が仕掛ける観光戦略であることは間違いない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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