新観光列車「ふたつ星」が握る西九州新幹線の命運 報道公開で明かされた最も重要な要素とは何か

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白い車両に金色のラインが映える。これは車両の外装では初めて使用されるというチタン製。小倉総合車両センターのある北九州市は、チタンの生産規模において世界有数の規模を誇る。地元金属加工メーカーの東洋ステンレス研磨工業が日本製鉄製のチタンをふたつ星に活用することを水戸岡氏に提案し、JR九州に採用された。

「チタンは経年劣化や変色がないというメーカーの提案を信じた。本当にそうなのか。10年も経てばわかるよ」。初めて使う素材。その意味では水戸岡氏にとってもチャレンジングな試みである。

ふたつ星4047の外観
パールメタリックの「ふたつ星4047」。金色のラインには鉄道車両で初めてチタンを使った(記者撮影)

内装は1、3号車の普通車指定席は木の素材を生かした落ち着いた雰囲気を醸し出す。2号車はラウンジカー。鉄道車両とはとても思えない豪華さはななつ星にも負けない。「36ぷらす3を超え、ななつ星に近づけるような価値を一般の人にも提供したいと考え、手間暇かけて作った。私としては清水の舞台から飛び降りるつもりで、色、形、そして車両では非常識といわれる素材をたくさん使った」と水戸岡氏が言う。

だが、完成した車両を見た古宮社長の感想は「まあ、いいんじゃない?」。水戸岡氏は「ちょっとがっかりした」と明かした。

路線を走ってこそ真価を発揮する

古宮氏の本心はどうなのか。改めて古宮氏に確認したところ、「まあいいんじゃないというのは確かに本心」という。もちろん内心では「すばらしいものができた」と思っていた。ただ、これまで水戸岡氏とタッグを組んで数々の列車を創り上げてきた古宮氏だけに、「水戸岡氏ならそうとう高いレベルのものを造ってくれるはず」と確信していた。その意味で「思い描いていたとおりのものを造ってくれた」という気持ちが言葉に出たのだという。ふたつ星は古宮氏が社長デビューしてから初めて登場した観光列車。製造には全責任を負う立場だ。同時に、水戸岡氏を信頼して完成するまで口出しすることは控えた。「無事完成してほっとした」というのが正直な気持ちだったかもしれない。

だが、それだけではないはずだ。古宮社長はこう話す。「鉄道写真コンテストでは美しい風景の中を走る列車が中心になるが、列車に乗るお客様にとっては車窓から見える景色がいちばんのごちそう」。むろん、ふたつ星の最大の売り物も有明海と大村湾という海沿いの景色である。

この考え方を反映すべく水戸岡氏は「窓を額縁に見立て、車窓の景色がどう見えるか」に腐心した。つまり、報道公開時におけるブラインドが下ろされて車窓の景色が見えない状態の内装は完成品ではない。工場から外に飛び出し、車窓から青い空や海の景色が目に飛び込んできたときに真価が問われるのだ。

社長の「本心」を聞いた水戸岡氏も、「車両は完成するまでわからないところがあるが、JR九州は私を信頼してくれているので、製造過程で余計なチェックをしない。信頼関係があるからこそ、いいものができる」と笑顔がこぼれた。

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