「穴を掘って埋める」ケインズ主義批判の大誤解 貨幣なき物々交換を想定している主流派経済学
このように、ケインズが不況になって失業が生じたら公共投資を行って雇用を生みだせばよいと主張した理由の根本には、「貨幣」と「不確実性」についての深い理解があったのです。
貨幣のない物々交換を想定した主流派経済学
さて、ケインズを批判する主流派経済学者たちは、市場原理に任せていれば、需要と供給が一致するという市場均衡理論を唱えています。
しかし、ケインズが言うように、将来は不確実であり、それゆえ人々は貨幣を持ちたがるから、需要と供給は一致しないというのであれば、需要と供給が一致する市場均衡理論とは、「不確実性」がなく、したがって「貨幣」も存在しない世界だということになります。言うなれば、物々交換の世界です。物々交換であれば、確かに需要と供給は常に一致しています。
そうです、主流派経済学の市場均衡理論は、貨幣のない物々交換の世界を想定しているのです!
「そんなバカな」と思われたかもしれませんが、しかし、このことは、「一般均衡理論」の中心的な理論家の一人であるフランク・H・ハーンですら認めていることなのです(Frank H. Hahn, ‘On Monetary Theory,’ Economic Journal, 98,4, December, pp.957-73)。そんなデタラメな経済理論に基づいて、経済政策の処方箋を出されては、たまったものではありません。
さて、このように、ケインズの理論は、「貨幣」と「不確実性」の関係を深く理解した上で、導き出されたものでした。
ところが、世間では、そうとは知らずに、ケインズの理論を批判する人たちばかりです。
そして、貨幣のない物々交換を想定した主流派経済学の市場均衡理論を鵜呑みにしながら、「不景気になったら、単に穴を掘って埋めればいいなんて、アホか」などとせせら笑っているというわけです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら