学校では「維持できない部活動」変える逆転の発想 忍び寄る少子化と教員不足をどう乗り越える

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野球少年だった日野田校長は父親の赴任先であったバンコクでリトルリーグに参戦するチームに参加していた。このチームでは、監督は見守るのみ。打順などの作戦も、サインもすべてを子どもたちが決める。

試合後は勝っても負けても父母も含めてお菓子を囲んでミーティングが行われ、大人も交えて意見を聞き、次に向けての練習プランを考えていた。

胸に残っている監督からの言葉

日野田少年が先発ピッチャーを務めたある日、8連続フォアボールを出してしまう。少年はベンチに戻るとき、怒られると思ってうそ泣きをして向かい「調子が悪い」と言い訳を伝えると、監督からは思いもよらぬ言葉が返ってきた。

「君はみんなに信頼されてピッチャーをやっている。君の調子が悪いのは、マインドセットを間違えただけ。マウンドを降りることが責任をとることにはならない。君は君で責任をとらないといけないよ」

日野田校長の胸にはこのときの指導が残っている。

「日本の場合、監督がすべてを決めている印象があります。また、部活動での活躍がその子の進路にまで関わる場合も出てきている。部活動をやめたらドロップアウトしたように見られたりするのも違和感があります。

マイケル・ジョーダンだってずっと野球をやっていました。鳴かず飛ばずの選手だったのが、高校3年生の冬に友人の一言でバスケットをやることになり、あれだけの選手になった。学校の部活動は本来、アクティビティです。いろいろなものに出会う機会を得ることで、気づきを生むもの。子どものうちから専門化するのはおかしいと思いました」

前出の茨城県の学校同様、生徒数的にもいくつもの部を設けるのは難しい面もあるのだろう。だからこそ、部活動という枠組みをやめ、外部指導者と連携、アクティビティとしていろいろなことを経験できるように仕組みを変えた。

初年度となる今年は、プログラミングと3人制バスケットの3on3、エスコートダンス、English Clubを取り入れた。

学校は場を提供するだけで、教員は活動に関わらない。どちらかといえば、学校の中で習い事ができるという感覚に近い。

公立では半ば強制に近い場合もある部活動だが、千代田国際ではいずれの活動も参加は任意。生徒は季節ごとにやる活動を変えることもできる。

部活動が果たしてきた教育的役割はもちろんある。だが、少子化と教員不足の進む今、子どもを軸に考えた場合、戦後以来続いてきた部活動のあり方もアップデートされることが必要になっている。

宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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