学校では「維持できない部活動」変える逆転の発想 忍び寄る少子化と教員不足をどう乗り越える
「子どもを病院に連れていきたいので、年休をもらえないでしょうか……」
4人の子どもの父親である中学教諭は、上司である学校長におそるおそる申し出た。
年休とは、一般の会社でいう有給休暇のことだ。この教諭は、部活動の顧問をしているため、土日もほぼ休みがない状態が何年も続いていた。もちろん年休をとったこともないが、それが普通と思って暮らしてきた。
申し訳なさそうに願い出た教諭を見て、心を痛めたのは校長のほうだった。
「家族のための時間を取らせてやれないなんて」
「部活未亡人」と妻に言われて…
その公立中学で校長を務めていたのが八重樫通氏。以後、部活動改革に取り組み、全国的に注目を集めている。
思えば自身も学校中心にまわる生活を送ってきた。教員は皆、部活動の顧問をやるのが当たり前。休日は部活のために使うのが当然。そんな生活の中、妻はいつしか自分のことを「部活未亡人」と呼ぶようになっていた。
男性の育児休暇制度の取得がやっと義務化されたが、浸透までは至ってないという職場も多い。学校もその1つだろう。
そんな中、問題の根源と指摘されるのが、教員が部活動の顧問をなかば義務的に担当する、部活動顧問制度だ。
今年6月、スポーツ庁が公表した有識者会議の提言をきっかけに、部活動のあり方の議論が各地で高まっている。提言では、来年度からの3年間を改革集中期間とし、部活動の“地域移行”を進めることが盛り込まれた。地域移行とは、部活動を地域クラブに移行したり、指導者を外部から呼んだり、教員が報酬を得て指導するといった形態へのシフトだ。
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