学校では「維持できない部活動」変える逆転の発想 忍び寄る少子化と教員不足をどう乗り越える
子どもがスポーツや文化活動に取り組む機会が大人の事情で縮小されると、否定的に捉えられることもあるこの話だが、実は子どもたちのためでもある。
2017年頃、八重樫氏が部活動改革を考え始めたのも、実は子どもたちのことを考えてのことだった。
廃部が決まった野球部員の思い
当時校長として赴任した茨城県つくば市にある市立茎崎中学校は今から35年前、八重樫氏が新任教師として働き始めた頃は、生徒数も1500人はおり、運動部が強いことでも有名だった。学校の周りには田畑が残る地域だが、当時は子どもがあふれるほど暮らしていた。
ところが、校長として赴任したときには生徒数が激減しており、全校生徒200人弱の小規模校となっていた。当然、できる部活動も限られる。
昔から強かったハンドボール部は人数を満たしていたが、ほかの部活は部員が足らない部も多く、兼部する生徒もいた。それでも人数がそろわない。
団体競技の代表格、野球部の部員は3人。校長として赴任したときにはすでに廃部が決まっていたこともあり、ピッチャー、キャッチャー、バッターを順繰り回して練習するだけの状況になっていた。
もちろん、試合に出ることもできない。残る運動部は個人戦のある卓球部やテニス部といったものだけだった。そんな中、学校全体で行う部活動の壮行会を目前にしたある日、野球部の生徒が校長室にやってきた。
「先生、僕たちも壮行会に出たいです」
野球部はもちろん試合には出られないため、例年、壮行会で前に出ることはない。いったいなぜ。八重樫氏が理由をたずねると、彼らはこう伝えてきた。
「僕たちは試合に出られない。だから、そんな僕たちの分も頑張ってくださいという気持ちを出場する部の人たちに伝えたい」
出られない悔しさ。だが、その思いを断ち切って、ならば、せめて大会に出場するほかの部の生徒たちを応援したいというのが子どもたちの思いだった。
「子どもにこんな思いをさせてはいけないと思いましたね」
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