日本が「円安貧乏」から脱却する3つの地道な方法 やっぱりピンチをチャンスに変えるべきときだ

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アメリカの同じ4~6月期GDPは前期比年率▲0.6%と、2四半期連続のマイナス成長であった。ところが交易利得を加えた実質GDIを見ると、前期比+1.4%となっている。経済成長がマイナスでも、「不労所得」で購買力がプラス成長してしまうのだ。さすがはエネルギーと食糧、さらには武器弾薬まで輸出している国だ。日本のような持たざる国から見ると、しみじみため息が出るところである。

日本の「3つの処方箋」とは?

さて、日本経済として「交易差損」を少しでも減らすためには、どんな工夫が可能だろうか。「円安貧乏」を回避する地道な手法として、以下の3点を提案したい。

第1に、輸出を伸ばすことである。現状の月あたり8兆円台の輸出は、わが国としては過去最高の水準であり、ちゃんと円安メリットを享受していることがうかがえる。今年上半期の実績を見ると、自動車や自動車部品は前年並みであったが、半導体等電子部品は18.7%増、半導体製造装置は23.2%増、鉄鋼は45.3%増などとなっている。ここは「稼ぎに追いつく貧乏なし」と考えたい。

第2に、化石燃料の使用量を減らすことである。これは日本経済が長期的に「脱炭素」を目指すうえでも理にかなった目標となる。そのためには再生可能エネルギーを増やし、原子力発電の再稼働を進めていく必要がある。近年の日本経済は、「石油価格が高い年は貿易赤字、安い年は貿易黒字」という傾向が続いているが、こんなふうに鉱物性燃料の価格に振り回されるのは、もちろん望ましいことではない。

そして第3には、インバウンドを増やすことである。2019年に3188万人まで増えた訪日外国人客数は、コロナ禍で2020年には411.6万人、2021年には24.6万人まで激減してしまった。さすがに今年は底打ちし、1~7月の累計で65.2万人となっている。

9月7日、日本政府は1日当たりの入国者数の上限を、これまでの2万人から5万人に引き上げるなど、水際対策の緩和を行った。まだまだ訪日にビザ取得が必要だとか、個人旅行が解禁されないなど、不十分なところがあるとはいえ、「コロナ鎖国」を開放に向けるのは正しい方向であろう。

思うに観光需要こそ、日本経済が円安メリットを取り込むためのもっともわかりやすい手法ではないだろうか。旅行収支の黒字は、過去最高だった2019年でも2.7兆円とけっして巨額ではない。これで円安が止まる、なんてことはないだろう。

それでも、ニューヨークで一杯3000円の豚骨ラーメンを食べていた人たちが、日本に来て「ラーメン二郎」や「じゃんがら」や「幸楽苑」を訪ねたら、感動するのではないだろうか。きっとお金払う側と受け取る側が、一緒にニッコリできると思うのである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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