日本が「円安貧乏」から脱却する3つの地道な方法 やっぱりピンチをチャンスに変えるべきときだ

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今回の円安局面は、アメリカの金利先高観に伴うドル買い(マクロ)と、日本の貿易収支の悪化という実需の円売り(ミクロ)という2つの要素が重なったものと考えられる。

前者については、8月26日のジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の「ジャクソンホール演説」による衝撃の余波がある。ゆえに市場には、「こりゃあ、ドル金利はどこまで上がるかわからんぞ」という警戒感がある。加えて8月雇用統計とISM非製造業総合景況指数がともに高水準だったから、一気にドル買いが進んだ。つまり「円安よりもドル高」という色彩が濃い。

足元の「貿易収支の悪化」は大丈夫なのか?

ただしこの問題は、多分に今後の「データ次第」である。このあと9月13日にはアメリカで8月CPI(消費者物価指数)の発表があるし、9月20~21日の次回FOMC(連邦公開市場委員会)ではドットチャートも発表になる。となればターミナルレート(ドル金利の予想される最高値)もおおよその想像がつくだろう。その辺が、当面のドル高のピークになるものと想像する。

ついでに言えば、日本も来春には次の日銀総裁が誕生するので、何らかの形で金融政策の「正常化」が始まるはずだ。10年間も続いたリフレ派の天下はさすがに終わる。そのことも、ドル円レートの転換点を形成するはずである。

むしろ気になるのは、後者のミクロ要因のほうだ。足元の貿易収支の悪化がまことに急激なのである。

財務省が8月30日に、2022年上半期(1~6月分)の貿易統計確報を公表している 。輸出が45.9兆円、輸入が53.8兆円、締めて貿易収支は7.9兆円の赤字となった。単純に2倍すると、通年で15.8兆円の赤字となってしまう。暦年で過去最大の赤字は2014年の12.8兆円だから、実需の円売りは相当な規模になっているだろう。ちなみに輸出も前年比15.2%増と健闘しているのだが、輸入の37.9%という途方もない伸びにかき消されている。

今年上半期の輸入増のうち、ざっくり半分が鉱物性燃料の増加分である。願いましては①原油が5.8兆円(106.3%増)、②LNG(液化天然ガス)が3.5兆円(94.1%増)、③石炭が2.9兆円(213.0%増!)である。数量ベースでみると、前年とは大差がない。

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