リニア、静岡知事が指摘「他県の不都合な真実」 南アルプスでは長野から静岡県境越え目指す

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リニアのトンネル工事では、まず斜坑と呼ばれるトンネルを掘る。斜坑は先進坑や本線トンネルに機材を運び込んだり、工事で発生する土砂を運び出したりするために使われる。斜坑は掘削完了後、作業用トンネルや非常口として活用される。

長野工区では小渋沢、釜沢、除山という3つの斜坑が2019年4月から今年3月にかけて相次いで完成した。これらの斜坑を使って本線トンネルや先進坑の工事が始まっている。工事は1グループ10人で2交代制による24時間体制。長野工区では3カ所で同時に作業が行われているので計60人が働いていることになる。

報道陣を乗せたバスは除山斜坑から品川方面に掘り進む先進坑に入った。先進坑は幅約7m、高さ約6m。断面積は約35平方メートルで本線トンネルの3分の1程度だ。品川方面に290m進むと切羽と呼ばれる最先端部に到着した。

都市部の大深度地下で行われるシールド工法とは異なり、山岳部では一般的なNATM工法で工事が行われる。ドリルジャンボが1.2m掘り進んでは支保工で側壁を支え、長さ3mのロックボルトを放射状に打ち込んだあと、表面にコンクリートを吹き付けて側壁を固める。これを1日当たり最大4サイクル行う。つまり、順調なら1日に4.8m進める計算だ。

煌々と照らされたトンネル内

トンネルの切羽は白いライトで煌々と照らされていた。トンネル工事というと真っ暗な中を小さいランプで掘り進むイメージがあるが、まったく違う。ライトの明るさは300ルクス以上あり、ガイドラインで示されている基準である「150ルクス以上」の2倍の明るさだ。切羽の状況を確認しやすいようにするためだ。ドリルジャンボと呼ばれる掘削機の横には監視員が立っており、天井などの状況に変化がないかどうかをチェックしていた。

リニアのトンネル工事では昨年10月に岐阜県中津川市で掘削中のトンネルで、地山が崩れて作業員2人が死傷した。長野県内でも昨年11月、今年3月、4月と3回にわたって豊丘村の伊那山地トンネルの工事で作業員が負傷する事故が起きた。JR東海は再発防止に向け施工会社と協議を行い、安全対策の強化に動いている。切羽監視者の配置に加え、低所作業において、防護ネットを張って天井からの万一の落石を防いでいる。

これだけ対策を講じていてもトラブルは起きる。9月8日0時15分頃、伊那山地トンネルの工事においてトンネル構内での作業中、重機を移動した際に、重機の後方にいた作業員に気づかず、作業員の足を引き左足を骨折するという事象があった。JR東海は「同工区でのトンネル掘削は一時的に中断しており、安全対策を行ったうえで再開する予定」という。安全への取り組みにゴールはない。

続いて、バスはルートを引き返し、釜沢斜坑から本線トンネルの現場に入った。本線トンネルはリニア車両が上りと下りの2本が走るため、幅約13m、高さ約8m。断面積は約100平方メートルで先進坑よりも巨大だ。先進坑は1サイクルあたり1.2m掘進していたが、本線トンネルは1.0m。やや短いのは山の状態や断面積が大きいことを考慮してのことだ。本線トンネルの切羽部分も明るいライトで照らされ、監視員が切羽の状況を見守っていた。

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