「静岡県が認めた」JRがリニア工事申請できる根拠 有識者会議中間報告は河川法の審査要件満たす
南アルプス・リニアトンネルに伴う大井川の水環境問題を議論した国の有識者会議中間報告について、静岡県は1月20日、流域10市町長と利水団体で構成する大井川利水関係協議会を開催した。
JR東海は、大井川利水関係協議会と水資源の保全に係る合意を結ぶことになっている。しかし、県は工事中のトンネル湧水全量の戻し方の解決策が示されていないなどとして、「JR東海の静岡工区着工を認めない」とする見解をまとめ、大井川利水関係協議会も同意した。
有識者会議の中間報告を副知事は「否定はしない」
県は有識者会議中間報告について、「工事を認めない」とする見解を優先したせいか、最も重要な中下流域の「利水上の支障なし」の結論に関する県中央新幹線対策本部長を務める難波喬司副知事の説明は決してわかりやすいものとはいえなかった。
このため会議後の会見で、筆者は、難波副知事に有識者会議中間報告の結論(①トンネル湧水量の全量を大井川に戻すことで中下流域の河川流量は維持される、②トンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は、極めて小さい)について問い質すと、難波氏は「否定はしない」と明言した。
リニアトンネル工事による大井川中下流域の「利水上の支障なし」とする有識者会議の結論を県が認めたことだけは確かなようである。
今回の「JR東海の工事を認めない」とする大井川利水関係協議会の結論を受けて、議論が紛糾し2019年10月4日を最後に中断していた県地質構造・水資源専門部会が近く、再開される予定だ。
このとき、紛糾した県専門部会の会議は、まさに、「工事期間中の湧水の全量戻しを行うトンネル工法」について話し合われた。そのテーマは、JR東海が上り勾配でのトンネル工法を選択した理由に関する科学的な議論であった。
JR東海は他のトンネル工法と比較した上で、静岡、山梨県境付近で山梨県側から上向きに掘り進める計画を示し、勾配があるため、工事期間中、約210万立方メートルの湧水が山梨県側に流出することなどを説明した。また、トンネルを静岡県側から下向きに掘り進めると、突発湧水によりトンネルが水没するリスクがあり、作業員の安全を確保できない、突発湧水を想定したポンプ設備の設置は非常に規模が大きく、現実的ではないなどとして山梨県側からの上向き掘削を選択した理由を説明した。
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