「静岡県が認めた」JRがリニア工事申請できる根拠 有識者会議中間報告は河川法の審査要件満たす

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県専門部会委員でトンネル工学の専門家、安井成豊・施工技術総合研究所部長はJR東海の工法を支持し、「静岡県側から掘る工法では水没する危険性がある。下向きの掘削はリスクが大きすぎる」と述べた。しかし、安井氏がさらに発言を続けようとすると、司会者が「今は具体的なことを話しているのではない」と遮ってしまった。それでも最後に、安井氏は「最大のリスクを考えて水没する危険性があるならば、そういった工法は普通取るべきではない」と断言した。

この会議の当日、県は「トンネル湧水の処理等における静岡県等の疑問・懸念事項」と題する文書を配布した。文書には、『JR東海は「毎秒3立方メートルを上限にリスク管理を行うことは技術的に可能」としながら、下り勾配で工事すれば「水没するリスクがあり、安全性に問題がある」のは矛盾している』とJR東海の上向き掘削工法への疑問を投げ掛けていた。

安井氏以外の委員は、JR東海の水収支解析への疑問やボーリングデータの不足などを指摘した。トンネル工法の議論の最中に、難波氏は「私たちが問題にしているのはトンネル近傍の河川の表流水だけではなく、地下水を含めた大井川水系全体の水量だ」との懸念を示した。これに対して、JR東海が「県境付近を流れる地下の湧水が大井川に流れるのか、早川(山梨県)に流れるのかはっきりとわからない」と述べると、難波氏は「わからないなら調査してください。それはむちゃくちゃ」と述べ、「JR東海は不確実性の管理、不確実性の認識、リスク管理を理解していない」などと厳しく批判した。

利水上の影響はほぼない

この紛糾した専門部会の後、国は、県とJR東海の間で行われてきた議論を検証、JR東海を指導するために沖大幹東京大学教授(水循環)、徳永朋祥東京大学教授(地下水学)、西村和夫東京都立大学理事(トンネル工学)らによる有識者会議を設置。会議では「工事中に流出する湧水全量を戻せ」という県の要請に対して、トンネル工学の専門家たちが「工学的に不可能で、無意味な議論」と指摘。このため、有識者会議は県外流出する水量(最大500万立方メートル)は非常に微々たる値であり、中下流域の利水上の影響はほぼないとする結論を出している。

また、JR東海は工事完了後に、山梨県内のトンネル湧水をポンプアップして、静岡県へ最大500万立方メートル戻す方策も提案した。有識者会議は、工事中の県外流出量を大井川に戻す方策については、関係者の納得が得られるよう具体的な方策などを協議すべきである、としている。

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