リニア、静岡知事が指摘「他県の不都合な真実」 南アルプスでは長野から静岡県境越え目指す
もっとも、11年という数字は今回明らかになったわけではない。JR東海は2014年8月の環境影響評価書で関東車両基地の工事が11年かかることを明らかにしている。
JR東海に確認すると、「環境影響評価書で示した後、施工計画を深度化し、工程の短縮を図っている。2027年開業は厳しい工程ではあるが、全体として影響が出ないように努めていく」という回答があった。川勝知事も「工事は前倒しできるかもしれない」としており、11年という数字そのものにこだわっている様子はない。
むしろ、川勝知事の怒りの矛先が向かった先は神奈川県の黒岩祐治知事である。黒岩知事は川勝知事の主張する部分開業論に反対し、2027年品川―名古屋開業の立場を取る。川勝知事は言う。「(黒岩知事が)土地買収が完了していないことや工事に11年かかることを知らないとしたら大問題。知っているのに知らせないならさらに問題だ」。
南アルプストンネル「長野工区」の現状
川勝知事は積極的にリニアルート上の工事現場の視察を続けている。山梨―静岡―長野の3県にまたがる全長25kmの南アルプストンネルについても、今月中には山梨県早川町にある工事現場を訪れたいとしている。しかし、長野県内の工事現場については、「現場に行くまでが大変」。隣県ではあるが交通の便が悪いのが理由だと言う。
南アルプストンネルの長野工区は8.4kmの区間だ。2016年11月1日、山田佳臣会長、柘植康英社長(いずれも当時)の出席の下、安全祈願・起工式が行われた。それから約6年後の9月2日、長野工区の現場をJR東海は報道公開した。川勝知事に代わって、どのような状況なのかをお伝えしたい。
長野県の南にある飯田市の人口は9万7562人。長野市、松本市、上田市、佐久市に次ぐ県内第5の都市だ。東京との行き来は高速バスで4時間強。バスで名古屋に出て新幹線に乗り換えてもやはり4時間くらいはかかる。もし飯田市内に造られるリニア長野県駅が開業すると品川―飯田間は40分圏内で結ばれる。リニアの恩恵を最も受ける街の1つだ。
飯田市から車で1時間ほど山奥に分け入ると工事現場がある大鹿村が姿を見せる。8月1日時点で人口938人の小さな村だ。そんな大鹿村でリニアの工事が進んでいる。
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