小売企業+テクノロジー企業であるアマゾンの事業構造はどんなものでしょうか。
アマゾンという企業は創業以来「地球上で最も顧客中心主義の会社」というミッションを掲げてきました。この顧客中心主義をベゾスは「聞く」「発明する」「パーソナライズする」という3つの動詞で定義しています。
すなわち、顧客の声に耳を傾け、それを実現するサービスを創造すること。そして「顧客をその人の宇宙の中心に置く」ことをパーソナライゼーションとしています。ベゾスは「地球上で最も顧客中心主義の会社」を目指しながら、画一的なサービスをよしとせず、顧客1人ひとりを尊重し、徹底的にパーソナライズされたサービスを提供しようとしています。
また小売企業としてのアマゾンは「低価格、豊富な品ぞろえ、迅速な配達へのこだわり」も忘れるわけにはいきません。ベゾスは「アマゾンの10年後」を問われるとつねに次のように答えるのです。「消費者が低価格、豊富な品ぞろえ、迅速な配達を求めるのは昔も今も10年後も変わらないはずだ」。その要求水準が年々高まり続けているものの、アマゾンは「低価格、豊富な品ぞろえ、迅速な配達へのこだわり」をアップデートし続けています。
アマゾンは「超成長企業」から「成長企業」へ
アマゾンの直近の業績はどうでしょう。ウォルマート同様、巣ごもり需要の一服感は顕著であり、2022年1~3月の四半期決算は7年ぶりの最終赤字に。このとき営業利益が前年同期比59%減だったことに対し、オルサブスキーCFOは「3つのバケツ」(インフレ顕在化、過剰キャパシティー、生産性低下)が主要減益要因だったと述べました。
2022年3月には、約23年ぶりとなる株式分割を発表、自社株買いの限度額も50億ドルから100億ドルへ引き上げると発表しました。いわゆる「株主対策」として一般的なものですが私には驚きでした。アマゾン創業者ジェフ・ベゾスがCEOだった時代には考えられなかったことだからです。
ベゾスは長年「アマゾンに対しては営業利益や利益率ではなく、中長期の成長やキャッシュフローを見てほしい」と言い続け、マーケットや投資家に対し、「株主対策よりも会社の成長」へ投資を優先することに理解を求めてきました。私は、裏を返せば、今回の決定はアマゾンが「超成長企業」から「成長企業」へのダウンシフトを示唆しているように思いました。
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