と、言葉数の少ない田沼駅長だが、確かに駅の周りにはいくらかの集落があるくらい。小さな駅舎の周りには雑草が生い茂る空き地があって、このあたりはかつての鉄道用地だったのだろうか。
そう思いながらムダにうろうろしてみると、茂みに隠れるように駅開業の記念碑が建っていた。文字通り“ひっそり”と。地域の玄関口たる駅ができたことを、地元の人たちはたいそう喜んだのだろう。明神駅が開業したのは、誰もがマイカーを持つなど夢のまた夢の時代、1929年のことである。
立派な旧駅舎が残る下小代
「下小代駅も、同じように何があるかと聞かれると困るんですが(笑)、2007年まで使われていた旧駅舎が駅前の通りを挟んだ向かいに保存されているんです」(田沼駅長)
実際に足を運んでみると、下今市駅などと雰囲気を合わせた黒壁の小さな駅舎のはす向かいに、確かに旧駅舎であろう立派な建物があった。
なんでも、下小代駅付近に線路を通すとき、この地域一帯の土地を所有する地主さんが大いに貢献してくれたのだとか。そしてその地主さんのご子孫が、文化財としても貴重な旧駅舎を取り壊してしまうのは忍びないということで、曳家で旧駅舎を駅前に移転。保存しているのだという。
「桜の季節には駅前に地元の方を集めて桜祭りをするなど、いまも駅を盛り上げてくださっていて、ありがたいですよね」(田沼駅長)
そんな知られざるエピソードを持つ下小代駅。駅の周りは小さな田園地帯と山々に囲まれていて、いくつかの製材屋さんがある。
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