ゼネコンが足元で加速する「両利きの経営」の正体 建設と非建設の「二兎を追う」新時代に突入

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「参考にしたのは『両利きの経営』」。スーパーゼネコンの一角、大林組で新領域のビジネスを推進する戦略部隊「ビジネスイノベーション推進室」を率いる堀井環室長はそう語る。

2021年4月に同室を立ち上げた際、40人のメンバーでのコンセプト作りや組織の運営プロセスを構築する参考書として、経営書『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン著・東洋経済新報社刊)を活用したという。

『両利きの経営』は、既存事業などを継続して深掘りしていく「知の深化」と、新しい領域を開拓する「知の探索」という2つの側面をバランス良く推進できている企業ほどイノベーションが起き、パフォーマンスが高くなる傾向にあることを指摘している。

「高度成長期はひとつの領域で拡大していけばよかったが、不確実なこれからの時代は中期的な仕組み、仕掛けが必要だ。トライ&エラーを繰り返しながら、新領域事業のプロセスを評価する仕組みを確立したい」(堀井室長)。

大林組は新領域として、グリーンエネルギーや産業DXといった分野の事業をあげる。「アイデアが出てから5年を目安に事業化したい。今年度中に、具体的な事業化案件を発表したい」と、堀井室長は意気込む。

ゼネコン各社が注力する「不動産」の関連事業

建設事業を主力事業としながらも、非請負の分野を拡充しようとする大手ゼネコンは多い。新たな収益源を見いだす「探索」の領域として、ゼネコン各社が現在、もっとも力を入れているのが不動産関連事業だ。

「今後の100年の経営を考えて、伊藤忠と組んだ」。西松建設の幹部は、伊藤忠との資本提携をむすんだ理由をそう語る。伊藤忠とは2018年ごろから不動産開発事業で協業していた。今後は連携をいっそう強化し、非建設分野のビジネスを拡大していく算段だ。

REIT(不動産投資信託)に参入する大手ゼネコンも相次いでいる。清水建設、大成建設、西松建設といった超大手から準大手ゼネコンまで、私募REITの立ち上げを次々と宣言している。

不動産関連事業は建設事業との親和性が高いこともあり、ゼネコン各社は過去にも開発を積極化したことがある。ただ、かつてはあくまでも建設工事につなげるための不動産開発でしかなかった。現在、ゼネコン各社が傾注しているのは、賃貸収益などの安定収益を狙ったものだ。

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