日本でいちばん「幸せ」なのはどんな人たちなのか 1万人に聞いてわかった日本人の意外なリアル

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そして、全体的に男性より女性のほうが「幸せ」実感が高く、生活の満足度や充実感も高い。世帯形態別では単身世帯が最も幸せ実感が低く、結婚し、子どもを持つことで高まっていく。

最も高いのは、30~40代の子育て期の女性で、その中でも仕事をしている子育て女性で高い。特にフルタイム勤務をしながら子育てをしている女性では、生活満足度・幸福度・生活充実感のすべてが顕著に高く、家族、仕事や人との関わり、経済状況などすべてが充足されているようだ。

逆に最も低いのが「ミドルエイジクライシス」にある50代男性だ。女性でも50代になるとやや幸福度スコアは下がってくるが、男性は特に50代を超えると生活の充実感が低くなりがちである。ややジェンダー論に寄ってしまうが、女性では家庭、趣味、人づきあいなど、仕事以外に充実感を感じる「拠り所」を複数持っている人が多いのに対して、男性ではそうでない人が多い。知命(50歳)を超えた男性にとって、いかに仕事以外の「拠り所」を見つけるかが、幸せ実感回復のカギになる。なお、男性では70代になると、幸せ実感はやや回復するようだ。

「拠り所」の大切さについてよくわかるのが、シニアの状況だ。毎日インターネットを使用している「高頻度デジタルシニア」、月1回以上毎日未満しようしている「低頻度デジタルシニア」、ほとんど使わない「非デジタルシニア」で幸福度スコアを比較してみると、高頻度でインターネットを使いこなしながら社会とかかわり続けていけている層ほど高い。仕事をリタイアし、コロナ禍で外出を自粛したとしても、社会とかかわり続け、人とコミュニケーションを取っていくことが、「幸せ」実感には重要なのである。

幸せの条件は、人とともに過ごすこと

こうしてみると、幸せの条件は、経済状況に加えて「家族」や「人付き合い」など、ともに過ごせる人の多さに拠っているということになる。実際、週1回以上会話・連絡を取り合う人(直接会うだけでなく、電話や電子メール、SNSなどによるつき合いも含む)の種類が豊富であるほど、幸福度スコアが高いという結果が得られている。

コロナ禍で人付き合いはしにくくなったが、テレワークの普及など働き方の柔軟性が増したことによって、家族との時間や余剰時間は増えた。改めて先行き長く続く「幸せ」実感を考えたときに、コロナ禍で生活様式が大きく変化した今だからこそ、家族や友人などとともに過ごせる大切な人を見つけること、そして、その大切な人たちとの時間を充実させていくことが求められる。

松下 東子 野村総合研究所 プリンシパル

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まつした もとこ / Motoko Matsushita

野村総合研究所マーケティングサイエンスコンサルティング部、プリンシパル。入社以来、一貫して消費者の動向について研究し、企業のマーケティング戦略立案・策定支援などに関するコンサルテーションを行う。初回より「生活者1万人アンケート調査」(1997年~)の調査設計・分析に携わる。現在インサイトシグナル事業部にて、独自データとシステムによるマーケティング・広告活動の見える化に取り組んでいる。著書(共著)に『なぜ、日本人はモノを買わないのか?』『なぜ、日本人は考えずにモノを買いたいのか?』『日本の消費者は何を考えているのか?』(以上、東洋経済新報社)がある。

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