ソ連東欧圏を崩壊させたゴルバチョフ氏の君主論 最後の書記長が残したウクライナ問題という火種

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しかもソ連崩壊後、西側資本がなだれをうってソ連・東欧地域に流れ国有財産を私有化して巨万の利得を稼ぎ、ソ連・東欧の人々の中に、にわか億万長者をつくっていった。いわゆるオリガーキー(オリガルヒ、新興財閥)という集団の形成である。こうした事態を引き起こしたのも、ソ連のゴルバチョフのペレストロイカが持っていた理想主義の結果であったといえなくもない。

確かにペレストロイカをソ連の立ち位置を考えずにひたすら進めれば、資本主義市場に組み込まれるしかない。それまでソ連・東欧にはコメコン(経済相互援助会議)があり、西側に対して閉鎖市場を形成していた。それが結局すべて西側の市場に組み込まれていったのだ。しかも、国営企業や社会保障制度も、西側の自由主義市場に組み込まれ、崩壊した。少なくとも、東欧がそれ以前に崩壊したことを学んでいれば、そうならなかったのかもしれないのだが。

ウクライナ問題という遺産

プーチンは、そのつらい状況を身をもって体験したのだ。敵に対し引くところは引くが、守るところは守る。政治家としては、冷徹で現実的な資質が必要である。ゴルバチョフにはこうした部分が欠けていたのかもしれない。西側から見れば、ソ連を崩壊させた人物、冷戦を終焉させた人物だが、ロシアにとってみればソ連を崩壊させ、多くの人々を貧困のどん底に陥れた人物でもあるのだ。

ゴルバチョフは、自らが引き起こしたウクライナ問題の結末を見ることなく、亡くなった。彼にとってはよかったのかもしれないが、その遺産をこれから背負うのは次の世代である。しかし、その解決は困難を極めるだろう。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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