ガンダムは、なぜ今でも人々を魅了するのか 映画で描かれたガンダムの新しい基準

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ガンダムの作者である安彦良和氏(撮影:梅谷秀司)

本作には原作がある。累計1000万部を売り上げたコミックス「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」である。作者の安彦良和氏は、ファーストガンダムで、キャラクターデザインやアニメーションディレクターを担当。主人公を上回るほどのファンを持つ敵役キャラクター「シャア・アズナブル」の造形をはじめ、ガンダム人気は安彦氏に追うところも大きい。

近年は、漫画家として、歴史を題材にした漫画作品を多数発表。明治時代の日本の政治を描いた「王道の狗」、満州国を舞台にした「虹色のトロツキー」など、専門家からも高い評価を得ている作品も少なくない。安彦氏は漫画作りにあたって、史実を丹念に調べ上げることから始まる。「歴史的事実の中にフィクションで介入したらおもしろいかなと思う部分が見つかると、自分の中で何かがうごめく。それが物語をつくるきっかけ」と、安彦氏は以前、週刊東洋経済のインタビューで述べている(2011年1月22日号「頼れる読書術」)。

不思議なほどのリアリティ

シャアの父、ジオン・ズム・ダイクンの死。「ガンダム・サーガ」はここから始まった

コミックス「THE ORIGIN」もこのアプローチを踏襲している。すでに「歴史」となったファーストガンダムについて、ストーリーの中で説明されていない部分、後年になって拡大解釈されている部分について、新解釈を加えた。世界の歴史を知り尽くす安彦氏だけに、「THE ORIGIN」で描かれるドラマは、現実に起きてもいる不思議のないほどのリアリティを持つ。まさに歴史絵巻ともいえる内容に仕上がった。

今回のアニメ化では、漫画原作の「シャア・セイラ編」と呼ばれる部分が4部作として映像化される。ファーストガンダムでは描かれなかったシャアとセイラという二人の主要人物の過去を掘り下げるとともに、「ジオン独立戦争」というファーストガンダムの前史といえるストーリーを抜き出した。安彦氏自身が総監督を務めている。

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