新作「ロード・オブ・ザ・リング」に賭けるアマゾン 常識外れ1シーズン650億円ドラマに込める野望

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さらに、宣伝費だ。ここでもアマゾンは手を抜いていない。『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』のテレビスポットが初めて流れたのは、今年2月のスーパーボウル。コマーシャルも注目されるスーパーボウルの30秒のスポットの値段は、今年、650万ドル(およそ9億円)だった。

また、アマゾンは、最初の2話の配信開始に先駆け、8月31日にアメリカの映画館で劇場公開するというマーケティングも展開している。特定のシネコンチェーンが協賛する無料イベントで、ポップコーンなどに使える10ドルのクーポン券もついてくるとあり、チケットはすぐに完売したようだ。こういったマーケティング経費は新シーズンが始まるごとにかかるし、エミー賞をはじめ各アワードの前にはキャンペーン費が必要となる。このシリーズは、10億ドル単位の巨大なプロジェクトなのである。

「ロサンゼルス・ワールド・プレミア」に集結したキャスト。『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』9月2日(金)からPrime Videoで独占配信開始©Amazon Studios

ところでその内容はというと、ジャクソンの3部作映画のリメイクでも、特定の小説にもとづくものでもない。これは、ジャクソンの3部作と『ホビット』の数千年前であるセカンドエイジを舞台にした、独自の物語だ。

トールキンファンの独自ストーリーを採用

ストーリーを作ったのは、パトリック・マッケイとJ・D・ペイン。高校時代からの親友で、トールキン作品の大ファンだったふたりは、権利を買ったアマゾンが業界内で良いアイデアがある人を募った時に手を挙げ、見事、採用された。

彼らが参考にしたのは、トールキンの小説にある巻末付属書。それらをつなげ、合間を埋め、キャラクターを膨らませることで、話を作り上げていった。その過程には、トールキン財団や、ジャクソンの映画を製作公開したニューラインシネマ、また出版社ハーパー・コリンズもかかわっている。J・R・R・トールキン本人はもう亡くなっているが、この新シリーズは、関係者みんなに認められ、祝福されて生まれたものなのである。

だが、誰よりも今作を祝福しているのは、アマゾンの創設者で取締役会長のジェフ・ベゾスだろう。「わが社でも『ゲーム・オブ・スローンズ』のようなシリーズを作るべきだ」と当時アマゾン・スタジオのトップだったロイ・プライスをけしかけていたベゾスは、権利の交渉にも自ら深くかかわったと言われる。

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