谷田部のテストコースは当初、自動車メーカーやサプライヤーなどに貸し出す形だった。
その過程でメーカーによる高速記録への挑戦も行われ、日本初のプロトタイプレーシングカーであるプリンス「R380」や、ヤマハとの共同開発でも知られる日本初の本格的なスポーツカー、トヨタ「2000GT」などが数字を残した。
こうして日本の自動車メーカーは少しずつ力をつけていったわけだが、そうなるとアメリカをはじめとする海外の組織との意見交換などが必要となり、公正中立な研究機関の必要性が高まってくる。そこで1969年、自動車高速試験場はJARIに組織替えし、こうした業務も担当することになった。
JARIになってからは、社会情勢の変化に対応して安全性能や環境性能の研究施設も用意することになった。1973年には衝突実験場が完成し、1981年には排出ガスの生体への影響に関する研究を開始している。
2005年、谷田部から城里へ
次なる転機は1985年に訪れた。新たに敷設される鉄道が、谷田部テストコース内を通過する計画がまとまったのである。のちに、「つくばエクスプレス」と命名される路線だ。
そこでJARIは、高速周回路の移設を決定。同じ茨城県の城里町に、谷田部時代と同じ全長5.5km、最高速度190km/hの高速周回路が作られ、2005年に「城里テストセンター」として稼働を開始する。さらに、水素自動車や燃料電池自動車(FCEV)のための安全評価試験設備なども用意された。
谷田部町はこの間、1987年に周辺の町村と合併してつくば市に入り、2005年には旧テストコースの跡地内につくばエクスプレスの研究学園駅が開業。その5年後の2010年には、市役所の新庁舎が開庁している。
ただし、旧谷田部町のJARIの拠点はその後もつくば研究所として存続しており、2005年には新しい衝突実験場、2017年には自動運転評価拠点「Jtown」が開設されるなど、発展を続けている。
一方、城里テストセンターには今年7月、ADAS(先進運転支援機構)試験場がオープンした。JARIではこれを記念して、多くのサプライヤーが参加する「ADASテクノフェア2022」を開催。筆者も取材する機会に恵まれた。
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