助けあえない日本人女性、「分断」が進んだ背景 他国に比べて女性間の連帯が弱いのはなぜか

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こうした中、菊地准教授が懸念するのは「女性自身が政治に期待しなくなっていること、そして、政治で女性差別が変わると思っていないように見えること」だ。日本の女性が連帯しづらいのは、そもそも差別が大きすぎるためで、しかし差別を解消するには連帯していく必要がある、というジレンマに陥ってきたと言える。では、希望はないのか。

【2022年9月1日17時45分追記】初出時の菊地准教授のコメントを修正しました

菊地准教授は「今、いろいろな人が声を上げだしてはいるので、期待したいところです。ただ、もう少し根本まで内容を深めて欲しいと思います」と話す。最近、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」に関するさまざまな取り組みが増え、報道もされている。「リプロの問題は最終的には明治時代から変わらない刑法の堕胎罪自体を廃止する必要がありますが、今のメディアはそこに触れない。あえて踏み込まないか、堕胎罪を知らない印象があります」。

ジェンダー報道で遅れている日本

つまり、運動を起こす女性たちも知識不足かもしれない。それは、「長らくメディアがジェンダー問題を取り上げなかったことが大きい。そこは欧米や韓国のメディアと大きく違うところです」と指摘する菊地准教授。

実際、日本ではジェンダー問題を扱うメディアは最近までほとんどなく、ジェンダー絡みの企画は通らない、あるいはそもそも受け皿のメディアがない、というのが数年前までの一般的な状況だった。報道は、幅広い人たちが知識を得る回路である。そこが封じられてきたため、女性たちはモヤモヤとした自分の不満の原因が何で、何を変えるべきなのかもわからなかったのだ。

しかしウェブメディアやSNSの台頭で、急速に事態は変わってきた。個別の活動に過ぎないかもしれないが、少なくともハッシュタグや署名による活動が活発に行われ、記事などを通して声を上げる人たちの存在も、どんな差別が行われているかも知る機会が増えた。

ジェンダー関係の書籍も、驚くほど多数刊行され続けている。フェミニズムに関心がある女性が増え、問題意識を持つ人も知識を蓄積する人も多くなってきた。長らく分断されてきた私たちの連帯は、まだ始まったばかりと言える。

菊地准教授は、「とりあえず女性は、あまりがんばらないほうがいいと思います。細やかに気を配って人の面倒をみて、自分も働いて全方位をカバーしている女性は多い。連帯をするにはまず、DVなど重い問題も含めて、グチを言い合うことから始めてはどうでしょうか。ウーマン・リブもそうした不満を言い合うことから始まったんです」とアドバイスしてくれた。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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