「データの奴隷」私たちの仕事が変質してゆく是非 ケインズが「デジタル資本主義」を分析したら

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ケインズ:しかし、もう1つの大きな疑問があります。今、情報を処理するスピードが飛躍的に高まる技術や、また話題の人工知能など人間の代わりをする技術など、新しいテクノロジーが急速に広まっていますが、それらが経済の成長のエンジンになると思われたにもかかわらず、停滞を招いているようですね。

現代の資本主義は〝ドミノゲーム〞

ケインズ:〝デジタル革命〞と呼ばれる、コンピューターの論理による新しい技術が次々と生まれて、加速度的に新たな発展が進行、多くの先進国でデジタル化が進んでいるわけですが、北欧のフィンランド、スウェーデンなどの人口の少ない社会民主主義的な国々のモデルを例外として、それに応じた経済成長を実現している国はあまり見当たりません。これは、重大な問題でしょう。

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たとえば、2008年にリーマンショックと呼ばれる世界的な金融危機がありましたね。その後も景気の低迷は続き、そうこうしているうちにパンデミックで世界的な停滞を迎えてしまいました。

しかし、実は、金融危機の前からすでに先進国の景気は減速していたという説もあるようですね。すると、21世紀に入ってからの世界経済の景気低迷は、金融危機と直接因果関係がない可能性があります。

〝ドミノ〞というゲームがありますが、1つの駒が倒れると次々に、なだれのように隣りの駒も倒れていきますよね。

グローバル化で現代の資本主義は、世界中が巻き込まれていく〝ドミノゲーム〞であることは、もはやみなさん常識化していると思いますが、現代のデジタルテクノロジー開発の大潮流にあっても、好ましくない横並びの波及効果を招き、〝成長〞という数字には現れにくい可能性を冷静に認識しておく必要がありそうですね。

丸山 俊一 NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー/立教大学特任教授/東京藝術大学客員教授

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まるやま しゅんいち / Shunichi Maruyama

1962年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズのほか、「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」などをプロデュース。過去に「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」「仕事ハッケン伝」「ニッポン戦後サブカルチャー史」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」ほか数多くの異色教養エンターテインメント、ドキュメントを企画開発。著書に『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『働く悩みは「経済学」で答えが見つかる』『結論は出さなくていい』など。

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