ユニクロ「秋冬の慎重値上げ」に透ける周到な準備 フリース1.5倍値上げ、一方で据え置く定番品も
一方、慎重な値上げの背景には国内市場特有の事情もある。同じユニクロでも、「日本に先行して海外では価格見直しを行っており、総じて価格の上げ幅も大きい。その中でも価値を感じてもらえるものは売れている」(岡﨑CFO)。
下の図は、世界各国で販売されているユニクロの「フリースフルジップジャケット」(メンズ)の価格を、日本円にそろえて比較したものだ。円安影響は多少あるにせよ、4000円前後で売られている欧米や中国と比べると、値上げ前の日本の価格は突出して低いことがわかる。
国内は実質賃金が長らく上昇していないうえ、ユニクロのような機能性衣料を売りとするプレーヤーも続々と増えている。その分、コストパフォーマンスに対する消費者の目は世界でもひときわ厳しい。
ファストリは人口減少が続く日本での飛躍的成長は見込んでおらず、国内ユニクロの店舗数はこの10年、800店前後を横ばいで推移する。一方の海外店舗は1500店超と、10年前と比べおよそ5倍に拡大。グループとしての成長ドライバーは完全に海外へと移っている。
「値上げで顧客離反」はもってのほか
それでも、ファストリにとって日本は「縮小してしまうと困る市場」だ。
海外ユニクロ事業は売上高こそ国内を大きく上回るが、収益性の面では直近3~4年でやっと、国内と同程度の利益を出すまでになった。とくに欧米は過去もたびたび赤字を計上するなど、収益安定化のハードルはなお高い。
圧倒的な知名度があり、店舗オペレーションも軌道に乗っている国内ユニクロの営業利益率は14.6%(2021年8月期実績)。海外ユニクロの12%(同)とは依然として差がある。
海外投資を加速させるファストリにとって、国内ユニクロは引き続き大事な利益の源泉だ。だからこそ、その柱が揺らぐことは望ましくない。クレディ・スイス証券の風早隆弘アナリストは「国内は1232億円(2021年8月期)の営業利益を出す市場。顧客への(価格政策に関する)説明責任を果たすことで、離反を防ぎ、利益を守ることが大切である」と指摘する。
秋冬商品が本格的に立ち上がるのは9月以降。食品などの値上げラッシュで家計支出が増える中、消費者の選別意識はさらに厳しくなるだろう。ユニクロの“入念値上げ”の成否は、価格を据え置く定番商品の吸引力にかかっている。
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