ユニクロ「秋冬の慎重値上げ」に透ける周到な準備 フリース1.5倍値上げ、一方で据え置く定番品も

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カジュアルな定番商品が主軸のユニクロは、それだけ価格の変化が目に付きやすい。ファストリの広報担当者は、「人気商品や、数量が多く売れる商品はなるべく値上げしない方針」と説明する。

来店客をひきつける商品や購入頻度が高い商品などは価格を据え置き、「お値打ち」のブランドイメージを死守する狙いだろう。

ユニクロの定番商品の価格動向(一例)

これに対し、買い替え需要はそこまで高くないものの、素材の変更や機能性を高めることで新たな価値を打ち出せると判断したものは値上げ対象となっている。

フリースはこの秋冬から、再生ポリエステルの比率を従来の30%から100%に高める。ウルトラライトダウンジャケットも、これまで以上に保温性の高いダウンを使用し、ファスナー部分を外からの風がより入りにくい作りに改良した。

過去の失敗に学んだ慎重姿勢

メリハリを付けた価格設定に、入念な準備の跡がうかがえるユニクロ。ファストリの柳井正会長兼社長は4月の決算会見の場で、「今の日本の経済情勢から考えると安易な値上げはできない。(消費者は)やはり価格に敏感だ」と口にしていた。

柳井氏がここまで慎重な姿勢を見せるのは、かつての失敗と同じ轍は踏みたくないという思いがあるからだ。

ユニクロは2014年に原材料高や円安を受け、秋冬の新商品を一斉に5%程度値上げした。さらに翌2015年は4月の段階で、秋冬シーズンについて平均10%の値上げを行うと早々に宣言。当時の会見で柳井氏は「値上げはお客様にとって重要な問題。バッドニュース・ファーストで、今日(2015年4月)お伝えした」と説明した。

ところが、強気な値上げとその発信手法は裏目に出た。消費者に値上げの鮮烈なイメージがついてしまい、客離れが起きた結果、2016年8月期は大幅な営業減益に陥った。

対する今回は、ファストリから値上げに関するリリースなどの公式的な発表は一切ない。6月の展示会で明らかになった商品や、すでに店頭などに並んでいる秋冬商品以外の価格政策はいまだ不透明だ。値上げのイメージが独り歩きしないよう、対象品番の選定や発信の在り方で、過去の失敗に学んでいる面は大いにあるだろう。

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