「匂いや音に敏感な子の母」が抱く12年間の後悔 親が望んでいる反応を子に求めるべきではない
加藤さん:自分を振り返ると、
●食べられるものが少ない(味覚過敏)
●ニオイに敏感。気持ち悪くなることが多い(嗅覚過敏)
●服の縫い目が苦手だったり、靴下が履けない(触覚過敏)
「ああ、僕は感覚過敏なんだ」そう気がついたときの、目の前が明るくなった感じは言葉ではうまくは表現できません。苦手なものが多く、体調が悪くなりやすい自分は「弱い人間」だと思っていました。
だから、その弱さに名前がついた瞬間、僕は安心したのです。僕が弱いのではない。感覚過敏が僕を弱くしていたのだと。
両親も感覚過敏という言葉に納得したようでした。「これも感覚過敏だったからできなかったのでは?」みたいな答えあわせをたくさんしました。僕がみんなと同じようにできないことがあったり、神経質な性格と思われていたりしたものの正体がわかったのです。
それ以来「無理なものは無理」が家族の共通認識になり、感覚過敏の問題だけでなく、あらゆることを強要されたり、我慢しなさいと言われることがまったくなくなったように思います。だから、僕の家族にとっては、感覚過敏を知ることで家族関係はよくなったと思っています。
「無知ゆえに、息子を傷つけてしまった」
加藤さんの母:何度振り返っても、保健室の先生には感謝しかありません。感覚過敏という言葉に出会わせてくださった先生です。
息子が、自分が感覚過敏だと知って安心したと表現していますが、母の私もほっとしました。息子の偏食や靴下などの神経質さ、おふさげをするような元気なクラスメイトの輪に入ろうとしない孤立性など、母として悩んだり心を痛めたりしてきたことの原因が見つかったからです。
それは息子のためというよりも自分のためです。「私の子育てが悪いわけじゃなかった」というお墨つきをもらったような安堵感でした。同時に、中学生になるまで気がついてあげられなかったことを申し訳なく思いました。
親が「感覚過敏」という言葉を知っていたのなら、食べない息子の口に無理矢理食べ物を入れることもなかったかもしれませんし、食べない息子を傷つけるような発言はしなかったかもしれません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら