ドンキホーテはなぜここまで強くなったのか

カリスマ安田会長が築き上げたモデル

安田会長は、こののちに「リーダー」なる卸売の会社をはじめる。そして当時としては斬新だった電話営業とFAXによるマーケティングで大成功をおさめる。が、その手法についても、社員が全員パンチパーマをかけていたため、とても客先に営業に出向かせることができなかったから、と述べている。つねに安田会長は、小売テーゼの逆を行く“業”が自然と備わっていたようだ。

その後、小売業に戻る決意をした安田会長は、ドンキホーテ第一号店を東京都府中市にオープンする。1989年のことだった。

卓越した陳列

しかしそれにしても、こうした廃盤品のほか、季節外れになってしまった処分品などを仕入れて高値で売るモデルは、その後にはじめるドンキホーテの方程式として定着していく。社内的な用語ではこれを「スポット仕入れ」と呼ぶ。いわば、非定期的な仕入れ品のことだ。ドンキホーテはこれが実に売上高の3~4割を占める。これは、説明したとおり仕入れ価格が安いために、定期仕入品よりも粗利益が多くとれる。

むしろ、ドンキホーテのビジネスモデルは、定番品とともに、スポット商品を買ってもらうことで、トータルとして粗利益を確保する戦略である。圧縮陳列なども、「いつの間にか高粗利益商品を買わせる」しかけとして現在は作動している。

圧縮陳列だけが有名になっているドンキホーテだが、他にも工夫が散りばめられている。たとえば入り口から店内を眺めてみよう。すると、手前の棚は低く奥まで見渡せ、視線の先には目玉商品が置かれている。お客は奥に進み滞在時間が増えるほど商品を購入する。また、店内の通路が曲線になっているところが多いのも同じ理由だ。

購買年齢層にあわせて棚の高さを調整するのはもちろんとして、親子連れがやってくるキャラクター商品は、何段かに分けて陳列している。抱っこされた子どもがキャラクター商品を見つけたとき、抱っこから下ろされた子どもがその商品をつかめるためだ。もちろん有名商品の隣には、比較対象として粗利益の大きいプライベートブランド商品(「情熱価格」)が陳列されている。

ドンキホーテはラックジョバーも活用している。ラックジョバーとは、店舗の棚にかかわる管理をまかされた問屋だ。問屋が商品供給を担うのにたいし、ラックジョバーは陳列や売り方そのものに踏み込む。ドンキホーテは、これらサプライヤーとの密接な関係をつくることでオリジナリティを発揮してきた。日本型小売業ではラックジョバーをほとんど活用していないが、圧縮陳列などの施策は、このラックジョバーとともに拡充してきた。

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