退勤まで「延々と暴力」新人パティシエの壮絶被害 泥酔オーナーの「流血事件」で店は営業停止に…

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私も飛び出していったスーシェフの後を追おうとしたのですが、逡巡していると、オーナーから「お前がおらんと販売員がいなくなるから残らんとあかんやろ!」と怒鳴られてしまって。

――理由になっていないように思います。

本当にそうなんです。でも、当時は反射的に「そうか、私が売らなくちゃいけないんだ」と思ってしまったんです。それくらい判断能力を奪われていました。

――そんな労働環境で、体を壊さず働き続けられたんでしょうか。

いえ、勤務中に3回、救急車で運ばれたことがあります。販売員としてお店に立っているとき、忙しいとなかなかトイレに行きにくいんですが、我慢しすぎて尿管結石になってしまって。接客中に倒れてしまいました。同じことが2回あって、もう1回は睡眠不足と栄養失調で倒れました。私、背は比較的高いほうなんですが、当時は体重が38kgくらいしかなかったんです。

救急搬送された日も、意識が戻るとオーナーから「何してんねん! 早く戻ってこい!」と電話で呼び出されて、3回とも点滴が終わったらお店に戻りました。

それでも辞めたいとは思わなかった理由

――先程から言葉を失うようなお話ばかりで、どれも即訴訟ものと言っていいレベルかと思うのですが、それでもお店に居続けたのはどういった理由からだったのでしょうか。

辞めたいと思ったことは一度もなかったんです。「この業界はこれが当たり前」「俺らの時代はもっとひどかった。だから感謝しろ」と毎日言われていて、むしろもっとがんばらなきゃいけないと感じていました。「お前はなぜ寝る時間を削って勉強しないんだ、努力が足りない」「うちを辞めたってどこもお前なんか雇わない」と言われて、そうなんだと思い込まされていたんです。当時はいっぱいいっぱいで、自分の将来に関わる大きなことを考える余裕がまったくなくて、そうなんだと思うほうが楽だったのかもしれません。

――前回インタビューしたゆりなさん(前任者6人を潰した上司と2人きりの部署になり、他の社員がいる前で罵倒されるなどさまざまなパワハラに遭う)も同様に、「辞めたいとは思わなかった」とおっしゃっていました。

私自身、前回の記事を読んですごく共感しました。辞めるという選択肢がなくなるんですよね。それに、私の場合はオープニングからいたので、お店に思い入れが深かったのもありました。

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