退勤まで「延々と暴力」新人パティシエの壮絶被害 泥酔オーナーの「流血事件」で店は営業停止に…

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
拡大
縮小

はい。そして、出会ったときは本当にいい人でした。明るく元気で社交的な人で、菓子職人としての理念もしっかり持っていました。お店のヴィジョンが素敵だなと思ったし、尊敬するパティシエも同じ人だったので共感もしていました。それで、「この人と一緒に働きたい」と思ったんです。

――変わったきっかけはどのようなものだったんでしょうか。

最大の要因は、次第に店の売り上げが落ちて、余裕を失っていったことだと思います。でも、それ以前にもお金が絡む場面では片鱗を見せることがありました。業者の方と請求についてやりとりをしているときなど、一方的に値下げを要求したりといったことがままありました。そういう素の部分が、徐々に露呈していったのだと思います。

従業員への暴力は、最初の頃は言葉だけにとどまっていたんですが、すぐに手が出るようになりました。胸ぐらを掴むとか殴るとか。生地を伸ばすのに使う麺棒という木製の道具があるんですが、それで腹や腰を叩くというのが一番多いパターンでした。からかって小突くとかではなく、出勤から退勤まで延々と続けるんです。

――どのような理由で暴力を振るってきたのでしょうか。

理由はあまりありませんでした。最初の頃はミスをしたとか――それにしたって言いがかりのようなときも多かったですが――何かしら理由があったように思うんですが、それもすぐになくなり、ただただ機嫌が悪いときに暴力を振るってくるようになりました。

日によるんです。すごく機嫌がいい日もあって、そういう日は一切手を出しません。だいたい7:3くらいで不機嫌な日が多くて、理由も周期もわからない。なので、毎日オーナーが店に来るまで"どっちの日"かわからず、おびえて待っていました。

それに、数分前に自分が従業員を殴ったことを忘れていたり、言っていることとやっていることが一致しなかったりと、異常な言動が多く、何か病気を抱えていたのかもしれません。泥酔状態や二日酔いで出勤してくることもあって、そういう日は事務所でずっと寝ているので、逆に安心でした。

同期は全員すぐに退職、佳奈さんも体に異変

――暴力は佳奈さんだけでなく他の従業員にも?

そうですね。と言ってもほとんどの期間、お店はオーナーとスーシェフ(副料理長)と私の3人だけで回していました。オープン時に3人いた同期がすぐいなくなってしまったので。職場に行くのが怖くて家から出られなくなった人、お医者さんから出勤を止められた人など、3人ともオーナーが原因です。

次ページ朝4時から深夜0時まで働く過酷な毎日
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT