味に敏感な子に「頑張って食べようね」が禁句な訳 小学校の給食の時間が苦痛で仕方がなかった

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先生からの「頑張って食べようね」「もっと食べないと大きくなれないよ」の一言を苦痛に感じる子もいます(写真:akiko / PIXTA)
感覚過敏という言葉をご存じでしょうか?諸感覚が過敏な症状だけでなく、周囲の理解が得られないために生じる「生きづらさ」に悩んでいる人たちがいます。感覚過敏の当事者であり、その悩みを解決する会社やコミュニティーを運営する16歳の加藤路瑛さんの『感覚過敏の僕が感じる世界』の一部を抜粋し、再編集してお届けします。

「感覚過敏」とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの諸感覚が過敏になっていて日常生活に困難さがある状態をいいます。感覚過敏は、病名ではなく症状です。そのため、診断名があるわけでもなく、治療方法があるわけでもありません。

感覚過敏は発達障害の人に多く見られる症状です。特に自閉症スペクトラムの研究や支援の文脈で言及されることが多いです。ほかにも、自律神経失調症、うつ病やPTSDなどの精神疾患や、認知症、脳卒中、交通事故などによる高次脳機能障害などでも感覚過敏の症状は見られます。

感覚過敏の症状や困りごとも人によって違います。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚など複数の過敏さがある場合もありますし、視覚過敏だけ、聴覚過敏だけという方もいらっしゃいます。

僕は食べ物のない世界で生きたい

僕の小さいころの生活の中で一番の困りごとは「食べること」でした。食べることが得意ではないのです。食べることに得意・不得意があるのを想像しにくい人もいらっしゃるかもしれませんが、大食いの人と少食の人がいるように、食べること自体を望んでいない人間もいるのです。それが僕です。

小さいころの記憶はありませんが、食べないせいでよく親に怒られていたようです。「なぜ食べないのか?」と聞かれるのですが、「食べたくないから」としか答えようがありません。

でも、こんな言い方をすれば「生意気」「わがまま」「ぜいたく」と怒られてしまうのです。味覚障害なわけではありません。味の違いはしっかりわかります。親の名誉のために言えば、料理がクソまずいわけでもないと思います。でも、小さいころから食べられるものが極端に少ない子どもでした。

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