SK‒Ⅱ「売れ残りの女」の動画が感動を呼んだ訳 国の文化を理解し成功したマーケティングとは

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海外でも人気のブランドが押さえている3つの視点について考察します(写真:PanKR/PIXTA)
日本の市場は成熟し、インフレやコロナが追い討ちをかけるなか、海外にビジネスチャンスを求める人は少なくありません。こうして日本の商品やサービスを海外展開しても、日本のような成功への道は描けないことが大半です。そのなかで大切になるのは、海外の知覚に合わせて商品やサービスを調整していく「ブランドカルチャライズ®︎」というマーケティングプロセスです。
著者の久保山浩気氏、川崎訓氏は、海外マーケティングのカギは「消費者の知覚理解にある」と主張します。この記事では2人の初の著書『ブランドカルチャライズ―あなたの商品を海外に届けるマーケティングの技法』から、海外マーケティングを成功させるためのヒントを、3回にわたってご紹介します(今回は2回目、1回目はこちら)。

日本の商品やサービスを海外に届けるうえで、現地の消費者理解は欠かせません。特に重視すべきは、「伝統・文化・宗教」「ライフコース」「世代論」の3つの視点です。

現地の消費者理解に求められること

1つ目の「伝統・文化・宗教」は、その土地に長く根づくものです。そのなかでも宗教は、日本では普段あまり意識せず、つい見落としてしまいがちですが、海外では生活と密接に関わっていることも少なくありません。

2つ目の「ライフコース(life course)」は、1人ひとりがどのような人生を歩んできたか、そのたどってきた道筋のことをいいます。ライフコースの傾向の違いは、進学率、結婚の平均年齢、出生率といった違いに表れますし、習慣や消費傾向の違いにもつながります。

3つ目の「世代論」は、日本ならバブル世代や氷河期世代、ゆとり世代といった分類です。世代ごとの消費傾向や価値観は、同じ日本人でも大きく異なることはよく知られています。それと同様に、海外でも世代は市場を見る切り口となるため、その国の世代論を押さえておくとマーケティングに役立ちます。

もちろん、すべての国において、この3つの視点が最優先されるとは限りません。ですが、消費者の知覚やニーズに大きく関わる要素として、まずはこの3つの視点を押さえておけば、消費者理解をスムーズに進められるようになります。

1つ目の視点、各国の伝統や文化の理解はマーケティングを成功させるだけでなく、致命的な失敗を避けるうえでも必須になります。

文化への無理解が生んだ例として、2018年に中国で炎上したのは「ドルガバ」として知られるイタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナです。

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