SK‒Ⅱ「売れ残りの女」の動画が感動を呼んだ訳 国の文化を理解し成功したマーケティングとは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

なぜこれほど世界的なブランドが、炎上してしまったのか。

それは上海のファッションショーに先立ち、インスタグラムで公開されたプロモーション動画が原因でした。その動画は、中国人のモデルが中国の食文化である箸を使い、イタリアの伝統的な料理をどのように食べるかを指南するような内容でした。

しかし、映像で示される箸の使い方は決して上品とはいえず、ナレーションもそのモデルの姿をばかにしているようにも感じられるものでした。これが中国の文化を「侮辱している」と現地で捉えられたのです。

動画が発表されてから中国内外で徐々に批判が高まっていましたが、さらにドルガバのデザイナーがSNSで、中国をばかにしたような発言をしていたことが発覚しました。

それにより、予定されていたファッションショーは中止となり、中国の有名人やモデルがドルガバの不買を宣言。一般消費者も巻き込んだ大騒動に発展し、ドルガバは謝罪コメントを出すに至ったのです。

それでも問題はおさまらず、数日の間にオンラインショッピングの大手プラットフォーム各社がサイトからドルガバを削除し、有名な百貨店でも取り扱いが中止となりました。

なぜこのような事態が起こったのか、ドルガバの真意はわかりませんが、根本的には文化への無理解があったと考えるのが妥当ではないでしょうか。そしてこの事例は、決して他人事ではありません。

日本人にとってはごく普通のことでも、海外ではNGという事柄は当たり前のように存在します。ただ伝統や文化を尊重する気持ちを持つだけでなく、意識的に理解を深めていくことが必要なのです。

中国を感動させた「SK-Ⅱ」の動画

一方、その国の文化を深く理解することで話題を生み、消費者に感動を与えるプロモーションを行ったのが、化粧品「SK‒Ⅱ」でした。

SK‒Ⅱは、2015年から女性の自分らしい生き方をサポートすることをメッセージに掲げた「Change Destinyキャンペーン」をグローバルで展開しています。日本では東京オリンピックに合わせて公開された、競泳・池江璃花子選手を描いた「センターレーン」(監督:是枝裕和)が話題になりました。

中国でも2016年の春節に合わせて公開された「Marriage Market Takeover」が大きな話題となり、世界的な広告賞であるカンヌライオンズも受賞しています。

本動画が扱うのは「剩女(シェンニュウ)」、つまり日本語にすると「売れ残り女」の物語です。非常に過激な言葉ですが、一定の年齢(動画内で語られるのは25歳)を越えても結婚していない女性を指します。

中国では女性は早く結婚して子どもを産むべき、という考えが根強く存在します。一方、小さい頃から海外の文化に親しみ、よりオープンな考えを持つ若い女性は、自分のキャリアやライフスタイルに重点を置く傾向が強く、親世代との大きな隔たりが生まれています。

ここまでだと、日本にもある世代間のギャップに見えるかもしれません。ですが、中国では結婚しない子どもたちに焦った親同士がお見合いをセッティングしたり、婚活をすすめたりする婚活マーケットが盛んで、週末の公園で「青空婚活市場」が開かれていたりもします。

日本と中国ではその深刻さが異なるのです。

次ページSK-Ⅱ「売れ残り女」の物語
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事